2025.06.09

【アート&イベントNEWS】佐藤雅彦の世界を探る展覧会「横浜美術館リニューアルオープン記念展 佐藤雅彦展 新しい作り方+分かり方」が6月28日より開催

展覧会「横浜美術館リニューアルオープン記念展 佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)」が2025年6月28日より開催決定。本展は、表現者・教育者として佐藤が手がけてきた多彩なコンテンツを一挙に紹介し、「作り方そのものをつくる」という発想に基づいた、独自のコミュニケーションデザインの考え方を探ります。

 

鑑賞のまえに~佐藤雅彦の分かり方~

作り方を作る

佐藤の創作の根幹にあるのは、作品を「作る」より手前の、「作り方を作る」という姿勢にあります。そうして生み出された数多くの「作り方」をもとに、TV−CM、教育番組、ゲーム、アニメーション、映画、数学や経済や漫画の書籍など、一見無秩序にも見える、メディアを問わない作品群が生まれてくるのです。
佐藤の創作の大半は、その「作り方を作る」ことに費やされていると言ってもいいでしょう。


イデアの工場(DNP大日本印刷)

ballet rotoscope

ピタゴラ装置(NHK「ピタゴラスイッチ」より)、画像提供:横浜美術館

キャラクターはちょっと苦手

佐藤雅彦は、誰もが知っている「バザールでござーる」「だんご3兄弟」「ポリンキー」などの親しみやすいキャラクターの作者でもあります。それらの知名度の高さゆえ、とかく佐藤はキャラクター・クリエイターだと思われがちです。しかしその実、佐藤は自身のことを「キャラクターが苦手」だと語ります。
キャラクターは、受け手により強く訴えかけるために必要なときにだけ繰り出される、ひとつの方法なのです。

[左]だんご3兄弟(NHK「おかあさんといっしょ」 より)[上]フレーミー[下]ぼてじん(上下ともにNHK「ピタゴラスイッチ」より)、画像提供:横浜美術館

[上]ポリンキーの秘密(湖池屋)[下] バザールでござーる(NEC)、ともにアドミュージアム東京所蔵

むしろ苦手なものだらけ

キャラクターから距離をとる佐藤の態度は、昔から絵を描くことが苦手だったことも一因のようです。佐藤は、文章を読むことも苦手、音楽も苦手だったと言います。それらの苦手なものが、ことごとく佐藤の主要な表現手段になっているのは、佐藤が自身の作った方法論に従順だからなのです。
その佐藤独自の手法を知れば、みなさん自身の苦手なものへの意識も変わるかもしれません。

意識を、生活をデザインする

佐藤は自身の創作を「新しい分かり方の供給」と定義します。体験者に新たな感覚や気づきをもたらす《計算の庭》《指紋の池》などのインタラクティブアートはその最も分かりやすい作例です。
また、既存のメディアの特性を利用して、人々の行動や思考に変化をもたらすことを意図した作品も数多くあります。朝晩の5分間で日本のリズムを作ろうとする「Eテレ0655/2355」は、その典型です。

本当にやりたかったのは、教育

幼少期から、人にものを教えることがなによりも好きだったという佐藤。単に知識を伝えることではなく、ものごとの仕組みや考え方を教えることに関心をもっていたところが佐藤ならではです。展覧会後半では、慶應義塾大学佐藤雅彦研究室を舞台に展開する、「教育」と「創造」とが一体になった佐藤の活動を紹介します。

佐藤雅彦 略歴

撮影:STUDIO DUNK

佐藤雅彦(さとうまさひこ)

1954  静岡県田方郡戸田村(現・沼津市)に生まれる
1977  東京大学教育学部を卒業、電通に入社
1987  電通クリエイティブ局に移籍、CMプランナーとして湖池屋「スコーン」(1988)「ポリンキー」(1990)、NEC「バザールでござーる」(1991)、サントリー「モルツ」(1992)などを手がける
1994  電通を退社、企画事務所「TOPICS」設立
プレイステーションソフト「I.Q」(1997/売上本数総計101万本)や「だんご3兄弟」(1999/CD売上枚数380万枚)、などジャンルを横断したコンテンツを次々とヒットさせる
1999  慶應義塾大学環境情報学部教授
2002  慶應義塾大学佐藤雅彦研究室での研究と実践をベースにした幼児教育番組「ピタゴラスイッチ」(NHK教育)放映開始。以降、国民的番組に
2005  佐藤雅彦研究室OBによるクリエイティヴグループ「ユーフラテス」設立
2006  東京藝術大学大学院映像研究科教授(2021年より名誉教授)
2011  芸術選奨文部科学大臣賞受賞
2013  紫綬褒章受章
2014  カンヌ国際映画祭短編部門に正式招待(2018年も)

 

観覧料

一般:2,000(1,900)円

大学生:1,600(1,500)円

中学・高校生:1,000(900)円

小学生以下:無料

※( )内は有料20名以上の団体料金(要事前予約、美術館券売所でのみ販売)
※障がい者手帳をお持ちの方と介護の方(1名)は無料(ミライロID可)
※同時開催のコレクション展も、「佐藤雅彦展」チケットで観覧当日に限りご入場いただけます。
※券売所は混雑が予想されるため、オンラインチケットの事前購入をおすすめします。

開催概要

横浜美術館リニューアルオープン記念展
佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)

 

会期:2025年6月28日(土)〜11月3日(月・祝)
開館時間:10時~18時(入館は閉館の30分前まで)
休館日:木曜日
主催:横浜美術館、TOPICS
特別協賛:株式会社電通、株式会社サイバーエージェント、DNP大日本印刷
協賛:株式会社湖池屋、株式会社ビームス
協力:NHKエデュケーショナル、アドミュージアム東京、NEC、東京藝術大学大学院映像研究科、佐藤雅彦教育文化財団、みなとみらい線