
造形作家・植田明志の10周年記念個展『DECAGON』にて公開中の映像作品『DAEAMS』。約7分間の作品の中には、どんな思いが込められているのか。今回、本作の制作裏側をお聞きしました。
INTERVIEW 植田明志
——改めまして、本作のストーリーを教えてください。
星の仮面を被った少年が、星たちが瞬く不思議な空間を旅するというストーリーです。
——今作を制作しようと思ったきっかけを教えてください。
一点物造形物ばかりを作ってきて、頭が固くなっているのを感じていました。
そこで今一度、造形作家の自分にとって「表現」とは何か、を問い直したいと思いました。
——ストーリーが生まれたきっかけとは?
『UNDERTALE』、『スーパーマリオRPG』をプレイしたことです。
——声は全くなく「字幕」のみの構成となっていますが、その仕様にした理由がありましたら教えてください。
ゲームの要素をアニメーションに取り入れたら面白いのではないか。というのがきっかけでした。
子どものころ夢中でプレイしたドットのゲームなどに宿る懐古性、クリエイティブ性。声がないからこその想像の余地、そして自分が作品に入り込めるという余地。そこに魅力を感じていたからです。
——本作は、コマ撮りで制作をされたのでしょうか?
基本的にはコマ撮りです。でもコマ撮りだけにこだわる必要もなくて。あくまで「表現方法のひとつ」という解釈です。なのでコマ撮りの他にも一発撮りの動画もあるし、風景の動画が流れたりしています。なのでストップモーションアニメではなく、映像作品として僕は紹介し続けています。
——映像制作はどれくらいかかったのでしょうか?
約2ヵ月です。
——関わったスタッフの人数と役目を教えてください。
ステージ制作のアシスタントが2人と、ストップモーションアニメに詳しいアドバイザーが1人、撮影のアシスタントが1人、という感じです。助かりました。
——どこで映像制作をされたのでしょうか?
いつも作品を作っている8畳のアトリエです。
——ライティングについて教えてください。
ライティングについては前述の『スーパーマリオRPG』というスーパーファミコンのゲームに凄く影響を受けています。コントラストを強くすると影も強くなる。この暗くて見えずらい影の部分が想像の余地を生み出します。
——ステンドグラスも制作されたのでしょうか?
ステンドグラスも制作しています。僕が図面を引いて、アシスタントの2人に作ってもらいました。本物のガラスではありません。どうやって作ったと思いますか?
——映像と一緒に流れていた、BGMも植田さんが手がけられたのでしょうか?
僕が制作しています。はじめてシンセサイザーを買って、ライン録りの仕方もわからなかったので、アンプから直接音を出してマイク録りしています。結果としてマイク録ならではの空間性がある音になっているので、凄くよかったなと思っています。
あと、今回はBGMというのを風景として音を捉えているので、リズムなどもありません。
——登場した作品も展示されていましたが、制作はいつからだったのか、また期間などを教えてください。
ステージアートについても全部で約2ヵ月くらいかかっています。撮影しながら作っていました。
——本作の見どころを教えてください。
「こういうのでもいいんだ。」と思ってもらえるような作品にしています。
クオリティに妥協したということではなくて、こういう方向性の「クオリティ」もあるよね。っていう。全部コマ撮りで撮影しなくてもいいし、ジャンプしたことが伝われば針金が見えててもいい。もっというと手とかも見えてても全然いい。伝わってさえいれば、それは表現になり得るでしょう。かわいいじゃないですか。
——動画データも販売されているということですが、そこにもこだわっていますね!
仰る通りです。こだわりました。モノが好きなので、お金がかかってもいいから質量のあるモノに作品を記憶させたかったのです。子どものころのゲームカセットや、新曲のCD。それらはタイムマシンになるじゃないですか。記憶を呼び起こすもの。
手触りだったり、そのときの興奮だったり、その時の匂いを呼び起こしたり。その体験もみんなとシェアしたかったのです。
映像作品「DREAMS」の動画データを記念展で販売しています。
今回は新しい試みとしてカード型USBメモリに動画データを入れています。
このようにUSBポートに挿してもらうと、動画の入ったファイルを読み込みます。
ファイルの中には「DREAMS」本編以外にも、おまけデータが入っているとか。。? pic.twitter.com/H4Zpfhy8QA— 植田明志 10周年記念展 (@aki_shi_) September 20, 2023
——最後にファンの皆さまに一言お願いいたします。
東京会場が終わり、映像作品の嬉しいご感想を沢山頂きました。本当にありがとうございます。「かわいかった」って笑顔で感想を伝えてくれたり、懐かしい気持ちになっていたり、いろんな表情で僕に感想を伝えてくれました。ずっとその時のみんなの表情を思い出しています。
これから名古屋会場、大阪会場で『DREAMS』を観て頂けるので、また感想を聞かせて下さい。まだ観ていない方たちも、是非楽しみにしていてください。
あ!『DREAMS』のファンアートとか描いていただけたら凄く嬉しいです!
Profile
植田明志
Akishi Ueda、1991年生まれ。 記憶や憧れをテーマに、どこか切なさを感じさせる作品を制作。 幼少のころから美術、音楽、映画に色濃く影響を受け、ポップシュルレアリスムの属性を主軸に、かわいらしいものから、奇妙な巨大生物まで、様々なスタイルやモチーフで表現している。 日本での活動をメインにしていたが、2019年に世界アートコンペ「Beautiful Bizarre Art Prize」の彫刻部門で1位を受賞、その後英語圏での活動も本格化し、さらにアジア圏での美術館個展「祈跡」(中国北京)を成功させる。 2021年に脳血管が破裂して入院。目に少し障害が残るが復活。
X(旧Twitter):@aki_shi_