スカルプターズ・ラボ

【Vからとびだせ!vol.5】製品化は想定外!? プリンターの限界に挑んだ名取さな 原型師saiスペシャルインタビュー!

バーチャルの世界から飛び出して、フィギュアとなったVTuberをご紹介「Vからとびだせ!

 

今回は個人勢の大人気VTuber、名取さなさんをご紹介。

ば~ちゃるな~すという肩書きを持つ彼女は、大好きなインターネットを舞台に雑談を配信したり、視聴者とプロレスを繰り広げたり、時には歌を歌ったり幅広く活動しています。

そんな彼女をゴージャスに立体化したヌォンタートを作り上げたのは名取さなさんの大ファンでもある原型師のsaiさん。発表予定だった2021年2月のワンダーフェスティバルは中止になってしまったものの、同年3月開催の「さなのばくたんCAFE in ELOISE’s Cafe」で展示され話題となりました。

そしてなんと本日、マックスファクトリーから商品化が発表!!!

「ただ好きで作っていた」と製品化に驚くsaiさんに、愛の詰まったフィギュアの製作秘話を伺いました。

インタビューの前に……

名取さなさんスペシャルコメント!

この記事のために、名取さなさんからスペシャルコメントをいただきました!

「コラボカフェにて展示され、「おい名取これ買わせてくれ!!!」とのお声が多かった王様名取のフィギュアが…この度なんと製品化!!!!

さえきやひろちゃんの素敵なイラストが立体になって世界に届くとは…嬉しすぎるなあ…名取のお気に入りはほっぺのプニ感!

そして今回造形のこだわりを原型師のsaiさんがおはなししてくださるとの事で名取も記事が楽しみです!

saiさん&関係者の皆さん本当にありがとうございます!せんせえがたも名取とともに是非お楽しみください!」

 

INTERVIEW

——今回のフィギュア製作に至った経緯をお聞かせいただければ幸いです。

名取さなさんの配信を最初期から見ていて、新衣装が出るたびにファンアートとして造形するのを恒例にしていたんです。今回は2020年の名取さなさんの誕生日イベントに向けて作られた新衣装。個人VTuberのさえきやひろちゃんがデザインとイラストとイベント用の3Dモデルを手がけたいつもより特別な衣装なので、当然作ろう、と。

メインツールは3ds Maxを使っています。分割作業や細かいシワのニュアンス付けなど、3ds Maxでは時間がかかってしまうところをZBrushで補っています。

——saiさんから見た、名取さなさんの魅力とは?

「視聴者を楽しませること」を主眼に置いているところですかね。意味不明なことばっかりやって、ぶっ飛んでるところはぶっ飛んでいる一方で、本人の「丁寧なインターネット生活」という言葉に象徴されるように、真面目にやるところはちゃんとやる。 安心して推せるVTuberです。特に好きなのはやっぱり普段の雑談配信。本人の性格がよく現れています。

——今回の造形の1番の見どころは?

さえきやひろちゃんの絵柄、このイラストの第一印象やディテールの細かさの再現です。立体化してもシャープネスを損なわないように、造形のエッジの立ち方やディテールの密度を、今まで作った名取さなちゃんのフィギュアよりくっきりさせて、見た目の解像度をちゃんとイラストに合わせるように気をつけました。

——イラストを立体化にするにあたって一番苦労したポイントは?

バランスですかね。 椅子と本体の大きさのバランスとか、イラスト通りにすると立体物としてのサイズ差が結構あったりして。あとはCG画面で見るパースとイラストの印象から受けるパースのズレから立体物としての整合性がなかなか合わせづらかったのですが、あくまで肉眼のパースで気持ちよくなるようにバランス調整して、周りの小物の配置も全部のオブジェクトがひとまとまりになった時のバランスを最優先で配置しました。

——CGの作業画面と出力物で印象が変わることはありますか?

今回初めて全てを自宅の3Dプリンタで出力したのですが、差はなかったです。3DSMAXの作業画面の設定で自分の目で見た時の画角に近くなるように設定しているので、これに限らず実際の仕事でも差を感じずに造形できています。

——彩色は いつもCG でシュミレーションする?

あまりCGで着彩しないのですが、今回はカラーでやってみました。普段は「グレースケール」。白、薄いグレー、黒に近いグレーとかに塗り分けて、擬似的にコントラストをつけて確認しています。パーツの色の明暗の配置バランスで印象が変わって見えるんですよ。明るい色だと大きく見えたり、濃い色だとしまって見えたり。

グレースケールでのシミュレーション画像。

——今回はカラーでやってみてどうでしたか?

そうですね、より実際に近い形で、色に引っ張られる印象とかもシュミレートできたかなと思います。ただ、造形面だとグレーの方がやりやすかったかな。シワに落ちる影がわかりづらくなったり、明るすぎる色のところがCG画面内で飛んじゃったりしてしまって。場合によって使い分けたいですね。

——イメージされているシチュエーションはありますか?

普段の配信のように、リスナーとコメントでプロレスしあっているようなイメージです。

——顔を可愛く作るコツは?

どんなフィギュアでもほっぺたのムニムニ感は意識しています。今回は頬杖をついているので、普段よりは持ち上げて作ってみました。

口周りや目の彫りは、顔の定型パーツに掘り込むのではなくて、それぞれの部位の起伏を意識しています。それぞれの面に起伏があって、それが重なり合って目や口の輪郭になっている。

手順としてはまずメイン角度から見て一番可愛くなるように作って、他の角度から見て破綻があればメイン角度の可愛さを損なわない限界まで調整しています。作業をしているとだんだん目が慣れちゃうので、毎日画面をつけた時の第一印象で違和感があれば修正。それを繰り返して、可愛い顔を作っていきます。

——目は手書きですか?

本番は筆で手書きです。一般的なエナメル塗料を使っています。基本はイラストに合わせて描きますが、目線の位置に合わせて瞳孔(瞳の特に黒い部分)の位置はアレンジします。どうやってもこっちを見ている感が出ない時は、瞳孔を中心から外して見ている側にぐいっと寄せる。

黒目は元イラストの彩度が高めなので、エナメルのマゼンタを純色で使っています。白目は元イラストでは影色に原色のシアン、マゼンタが使われていたので、それに合わせて明るい色を上から塗っています。

——髪の毛の造形について教えてください。

髪の毛も3DSMAXで造形しました。ディテールのシャープさを意識して、ねじれた部分や翻った部分のエッジを普段よりもピンピンに薄くしています。もともと一点もののフィギュアの予定だったので、量産には向かないような細い毛も3Dプリンターの限界まで細く作ってみました。髪の毛にも手書きでハイライトを入れています。このハイライトは単なるグラデーションでやるとイラストの印象が薄れちゃうかなと思ったのであえて二次元的な表現にしました。

——衣装についてのこだわりを教えてください。

ぱっと見、普段の配信衣装からは随分違うアイドル然とした衣装なんですが、手首の包帯や色味、衣装の構成は実は通常衣装のイメージを尊重しているなと感じました。

ポイントとなるフリルは、デジタル造形の便利機能を使って作りました。ギザギザのひと山だけ作ってコピペで並べたものを、パス形状に自動で沿わせることができるんです。フリルのひと山の大きさもパラメーターで調整できるので、いろいろ検討できてとても便利です。最後に破綻しているところを直したり、細かいニュアンス付けをして完成させました。

——ハイソックスに包まれた脚もかわいいです。

生地の厚みはそんなに透けのない、薄すぎない生地を想定しています。元が華奢なので、大袈裟になりすぎないように、脚のラインを損なわない小さめのシワを造形しました。靴下と太ももの切り替わり部分は、フィギュアの強度とのせめぎ合いながらキワのレース形状のうすさの限界に挑戦したり、ベルトの締め付け部分の肉感を意識して造形しました。

——周りのアイテムについて。

ケーキも昨年のお誕生日配信でのイベント用にデザインされたもので、やはり個人的に作っていたんです。周りのキャラクター達は配信で生まれた謎の生物ですね。アヘエビは、今回のイラストのハイライトの当たり方に合わせてパールで塗装しています。

椅子はゴージャスなピンク色で描かれていたんですが、色はそこまで濃くないというところで、そこの塩梅は凄く悩みました。ベース色はおとなしめにして、影色にグラデーションで原色系の色を使う事で印象を合わせました。

——商品化の連絡があった時の感想は

これまで作ってきたさなちゃんのフィギュアと同様全く商品化を考えてなくて、ただ好きで作っていたので単純にびっくりしましたし、製品化できるように作っていなかったので……大丈夫かなと(笑)。さえきやひろちゃんのイラストのディテールの細かさを頑張って再現したので、量産化でもできるだけシャープに再現できたら嬉しいなと思います。

——発売を楽しみにするファンの皆さんに一言お願いいたします。

発表した当時も「製品化はないのか」という声は結構いただいて、やっと届けられるなと思っています。今後もこれに限らず名取さなさんの応援としてフィギュアを作っていくつもりなので、まだまだ楽しみにしていただけたら嬉しいです!

PROFILE

sai

京都出身。幼少から絵やプラモデルに触れ、趣味で粘土造形をしていたところ、 友人の誘いをきっかけに2010年夏のワンフェスに初参加。 個人活動を続けながら2012年から原型制作会社へ入社。 2014年に上京し現在はフィギュアメーカー所属。仕事の傍ら個人製作も継続中。

twitter:@___sai___