ハッピー・バースデー、ミスタークレイグ!クレイグ版「007」完全版メイキングブック『BEING BOND ダニエル・クレイグ/ジェームズ・ボンド公式本』発売!

 

テキスト・神武団四郎

2006年公開の『007/カジノ・ロワイヤル』から2021年公開の『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』まで5本の「007」でジェームズ・ボンドを演じたダニエル・クレイグ。15年という歴代ボンド俳優最長記録を更新したクレイグ版「007」にスポットを当てた完全版メイキングブック『BEING BOND ダニエル・クレイグ/ジェームズ・ボンド公式本』が、クレイグの誕生日3月2日に日本で発売される。本書は作品ごとに5つの章で構成され、それぞれ企画のスタートからプロダクション、公開後の反響まで網羅。インタビューや豊富な図版を交えて徹底紹介した、完全版と呼ぶにふさわしい一冊だ。

スタッフ&キャストが明かすドラマチックな舞台裏

本書はクレイグをはじめとするキャストや、バーバラ・ブロッコリらプロデューサー陣、脚本チーム、監督、撮影、美術、衣装、アクション、特殊効果などなど多くのスタッフのインタビューやコメントがちりばめられている。

第一章は「007」シリーズを立ち上げたプロデューサーのアルバート・R・ブロッコリとハリー・サルツマンが、原作の第1作「カジノ・ロワイヤル」の権利取得を逃したエピソードを紹介。アルバートの娘バーバラはその映画化への思いを語り、前ボンド役者ピアース・ブロスナンを降板させて『カジノ・ロワイヤル』を映画化したいとMGMに直訴したいきさつを明かしている。

メジャー大作に懐疑的だったクレイグと、彼に白羽の矢を立てたプロデューサー陣のせめぎ合いなど、異なる視点で舞台裏が語られるのも本書の魅力のひとつ。ヘンリー・カヴィルやサム・ワーシントンらと行ったスクリーンテストの様子や、クレイグ起用の発表直後に誹謗中傷の嵐にさらされた製作チームの困惑、そのゴタゴタを止めたパパラッチの“奇跡一枚”も写真と共に紹介。クレイグがプロデューサーに名前を連ねたいきさつや、シリーズ初の連続ものに対する脚本チームの戸惑い、オファーを一度断った後に出演を決めた『カジノ・ロワイヤル』のエヴァ・グリーンほかキャスト陣の胸の内など、映画に負けないくらいドラマチックな舞台裏が当事者たちのコメントを通して味わえる。

“奇跡一枚”、ブルーの水着姿のクレイグ。

『007 スカイフォール』のM最期のシーンの撮影にあたり、スタッフやジュディー・デンチが思いを語る。

 

 

豊富な写真で味わうゴージャスな「007」ワールド

250ページを超える本書には多くの図版が掲載されている。場面写真はもちろん、リハーサル風景や撮影の合間の談笑や休憩中のオフショットなど、ふだんは見ることができないクレイグたちの素顔が覗けるのも本書のお楽しみ。記録として貴重であるだけでなく、構図や色合いなど写真として楽しめる図版も多く、写真集としての味わいを持っているのも特長といえるだろう。

もちろん資料図版も満載だ。「007」シリーズの代名詞で、その後のエンターテインメント作品に影響を与えたのが凝りに凝った美術——豪華で未来的セットの数々、大人の色気うボンドやボンドレディたちの華麗な衣装——が、コンセプト画と完成したセットや衣装、それらを使った撮影風景や場面写真を比較しながら楽しめる。

『カジノ・ロワイヤル』ではクライマックスの“沈む家”の仕掛けについて、『007/慰めの報酬』ではMI6、『007 スカイフォール』ではアバンタイトルでクレイグが着ていたスーツ、『007 スペクター』ではブロフェルドのアジトについてなど、作品ごとに別枠のコラムをもうけて見どころを紹介。「007」ワールドをより深く楽しめる構成になっている。

ミニチュアとセットを組み合わせた『007/カジノ・ロワイヤル』のクライマックスの撮影法。

ボンドの相棒、アストンマーティンDB5の舞台裏も紹介。

 

本物志向の「007」ならではの驚きのアクション&スペクタクルの撮影法

クレイグ版「007」で大きく注目されたのがリアルなアクション。それを支えているのが、徹底した本物志向の撮影だ。クレイグはボンドを演じるにあたって肉体改造とトレーニングで体をつくり、多くのアクションを実践。『カジノ・ロワイヤル』の工事現場での高所スタント、『慰めの報酬』の燃えさかるホテルでの死闘、『スカイフォール』での走行中の列車の屋根での格闘など、ハーネスを着け自ら危険な撮影に挑んでいた。そんなアクションの舞台裏を、多くの写真とクレイグやスタントコーディネーターたちの解説で克明に紹介。クレイグ版ボンドは負傷による撮影延期がたびたび話題を呼んだが、それも納得の現場の様子が明かされる。

スペクタクルシーンも「007」は本物志向だ。たとえば『スカイフォール』で地下鉄車輌が地下空間に落下するシーン。通常の映画ならCGIを使うところだが、「007」チームは実物大の地下鉄2両(各5トン)と線路をスタジオ内に作り実際に落下させて迫真の映像を生み出した。シリーズの特殊効果は、本物使用がデフォルトのクリストファー・ノーラン監督作品でも活躍しているクリス・コーボールドが担当。合成を最低限に抑えた撮影術に驚きを禁じ得ない。『スカイフォール』のクライマックス撮影にあたりスタッフが共有したヘリコプターの動線と爆薬の配置図など、ふだん目にすることのない資料が掲載されているのもお楽しみだ。

第1作『007 /ドクター・ノオ』から60年続いてきたシリーズの魅力や伝統を受け継ぎながら、時代をリードするエンターテインメントとして生み出されたクレイグ版「007」。『BEING BOND ダニエル・クレイグ/ジェームズ・ボンド公式本』は、ダイエル・クレイグが渾身で挑んだ5部作の魅力がたっぷり味わえる一冊なのだ。

「007」に欠かせない過酷なスタント。写真やコメントのほか、指示書などの資料も掲載されている。

『007/カジノ・ロワイヤル』でル・シッフルを演じ大ブレイクしたマッツ・ミケルセンによる拷問シーンのこだわりも解説。


口絵に使われているのがシリーズのポスタービジュアル。そのデザインからもクレイグ版の魅力が伝わってくる。

 

書籍概要

BEING BOND ダニエル・クレイグ/ジェームズ・ボンド公式本

2023年3月2日発売
A4変型判 256ページ
定価:本体4,000円+税
発売・発行:玄光社