【スカルプターズ・ムービー】世界中のSNSで話題!「ミーガン」の殺人ダンスシーン舞台裏

テキスト・神武団四郎

殺人人形の恐怖を描いたスリラー『M3GAN/ミーガン』が6月9日より公開される。本作に登場するミーガンは、AIを搭載した等身大のお友達人形。優れた能力が過剰反応を引き起こし、人々を襲いゆく様がスリリングに描かれる。そんなミーガンは、マスクをつけたダンサーやパペット、アニマトロニクスで撮影。CGにはないリアルな質感や不気味なダンス姿が話題を呼び、公開前からTikTokを中心にショートムービーがバズるなど社会現象に発展。映画を大ヒットに導いたミーガンの舞台裏を紹介しよう。

 

『M3GAN/ミーガン』

6月9日(金)より全国ロードショー!
配給:東宝東和
© 2023 UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.

 

 

 

 

STORY

旅行中の事故で両親をなくした9歳の少女ケイディは、おもちゃメーカーの開発者である叔母ジェマに引き取られた。しかし仕事に追われケイディに向き合う時間がないジェマは、開発中だったAI搭載のお友達人形M3GAN(ミーガン)を姪に与えることにした。優れた学習能力を持つミーガンは、相手の反応を読み取りながら最適化。話し相手から身のまわりの世話など親代わりも務め、ケイディにとって無二の存在になっていく。ミーガンに依存しすぎる姪をジェマが不安に思いはじめた矢先、ケイディに噛みついた隣家の犬が失踪。ケイディをいじめた男の子が謎の死を遂げるなど不審な出来事が頻発する…。

傷心のケイディの前に現れたミーガンは、ケイディの心理状態や反応を読み取りながら、巧みな話術でかけがえのない友だちになっていく。

ミーガンと片時も離れようとしないケイディを心配する開発者のジェマは、ふたりの間を裂こうとするが…。

全米を魅了したキモくてゴージャスなミーガンダンス

2022年10月に『M3GAN/ミーガン』の予告編が公開されると、そこに挿入されたミーガンのダンスがネットで大きな話題になった。くねくねと体をくねらせ次の瞬間ジャンプをしたりと、トリッキーなダンスを演じたのが国際大会で受賞経験を持つ12歳のダンサー、エイミー・ドナルド。彼女のダンスの師で振付師のカイリー・ノリスが考案した“ミーガンダンス”はTikTokでミーム化し、公開前にもかかわらずネット上にはさまざまなミーガンがあふれかえった。

 

人形玩具のCMパロディとして制作された『M3GAN/ミーガン』の本国版プロモーション映像。

 

 
 
 
 
 
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振付師カイリー・ノリスがインスタにアップした、エイミー・ドナルドの“ミーガンダンス”リハーサル風景。

ホラー界の最強コンビが生みだした最恐のお友達

本作の製作と原案を手がけたのは、『ソウ』や『死霊館』など人気ホラーシリーズの生みの親で、『ワイルド・スピード SKY MISSION』(2015)や『アクアマン』(2018)などジャンルを超えて大ヒット作を連発している映画監督ジェームズ・ワン。『パラノーマル・アクティビティ』や『パージ』など人気シリーズや『透明人間』(2020)など個性派ホラー映画で知られるブラム・ハウスのジェイソン・ブラムが、ワンと共に製作に名を連ねている。

監督はテレビ界出身で、本作がメジャーデビューになるニュージーランドのジェラルド・ジョンストン。初長編のホラーコメディ『Housebound』(2014)で高い評価を獲得し、2人の“ホラーの巨匠”の目にとまり本作に抜擢された俊英だ。野心家の女性レポーターがセレブの私生活を暴くTVシリーズ『The Jaquie Brown Diaries』(2008-2009)の脚本・監督で名を上げたジョンストンは風刺コメディの名手として定評があり、テクノロジー依存をテーマにした本作でもその持ち味が発揮されている。

彼らが生んだ本作のアイコンがAI搭載人形のミーガンだ。ミーガン=M3GANとは、Model 3 Generative ANDroid(次世代型アンドロイド3号)の略。身長は9歳のケイディとほぼ同じで、ルックスはエレガントなお姉さん風。ペアリングしたオーナーとの会話や行動を学習し、完全無欠の親友に成長する。読み聞かせや歌、ピアノの演奏を完璧にこなし、勉強やしつけも相手が受け入れやすい形で提供するなど、ミーガンさえいれば友だちや教師、親すらいらない完璧な存在。ジョンストン監督はインタビューでミーガンを「親が子供にできることも、できないことも完璧にこなす足の生えたiPad」と形容した。

ミーガンはしだいに暴走していくが、その根底にある「ケイディを守る」という使命感が彼女を殺戮マシンではなく共感を呼ぶ存在にしている。

ジェマの家の窓辺に立つミーガンとジョンストン監督。独身で多忙なキャリアウーマンであるジェマの家の外観はミッドセンチュリー風の上品な屋敷が使われた。

ジェマ 役のアリソン・ウィリアムズとジェラルド・ジョンストン監督。撮影はカナダで行われる予定だったが、パンデミックの影響でニュージーランドに変更された。

「不気味の谷」現象を利用してデザインされたミーガンの制作

ジョンストン監督は撮影にあたり、CGではなく触れることのできるプラクティカルなエフェクトを希望。そこでミーガンは、マスクを着けた俳優とロッド操作のパペット、アニマトロニクスを使いわけて撮影することになった。ミーガンは遠目には本物の人に見えるが、肌や髪、目などは意図的に作りもの感を出しデザインされている。制作陣は「不気味の谷」現象(限りなく人間に近いためわずかな差が違和感や嫌悪感を抱かせること)を利用。何気ないシーンでも時おりゾッとする怖さを醸している。

ミーガンのマスクとパペット、アニマトロニクスを監修したのは、『ザ・ホエール』(2022)で主演のブレンダン・フレイザーを体重270キロの巨体に変え、アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞に輝いた特殊メイクアーティストのアドリアン・モロー。パペットは動作する部位が違う6体ほどが用意され、パペティアはセレブのような気品あるしぐさを操作した。瞳孔の大きさや口元、表情が変えられるアニマトロニクスはおもにクローズアップで使用。『チャイルド・プレイ』のチャッキーのような極端な表情をさけ、内なる邪悪さで観るものを戦慄させる。なおアクターがかぶるマスクには仕掛けがないため、歩くミーガンが瞬きをするなど表情の変化が必要なカットはアニマトロニクスの動きを模して作成したCGでサポートした。

『チャイルド・プレイ』のチャッキーのような極端な表情をさけ、内なる邪悪さで観るものを戦慄させる。なおアクターがかぶる

ミーガンのデザインには「不気味の谷」現象を利用。ミーガンの声は俳優で歌手のジェナ・デイヴィスが担当し、歌声も披露した。

1月に全米で公開された『M3GAN/ミーガン』は、ミーガン効果も手伝って『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』に次ぐ2位でスタートと予想を超える大ヒットを記録。ジェームズ・ワンとジェイソン・ブラムは公開から1か月を待たず続編を決定し、2025年の公開が発表された。セレブなルックと裏腹な容赦ない凶行をくり返し、またたく間にホラークィーンに上りつめたミーガン。キモくてゴージャスなその魅力をスクリーンで味わってほしい。

ミーガンの多彩なファッションは、オードリー・ヘップバーンなど60年代のセレブのイメージに基づいてチョイスされた。

CAST

アリソン・ウィリアムズ、ヴァイオレット・マッグロウ、ロニー・チェン 他

 

STAFF

監督:ジェラルド・ジョンストン
製作:ジェイソン・ブラム、ジェームズ・ワン
原案:アケラ・クーパー、ジェームズ・ワン
脚本:アケラ・クーパー
ミーガン特殊効果:アドリアン・モロー、キャシー・ツェー
配給:東宝東和
© 2023 UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.