【スカルプターズ・ムービー】劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影(くろがねのサブマリン)』監督・立川譲氏インタビュー!

※本ページのインタビューには本編シーンの一部ネタバレを含みます。

テキスト:神武団四郎

公開わずか3日間で興収31億円突破と、シリーズ歴代No1の大ヒットでスタートした『名探偵コナン 黒鉄の魚影』が絶賛公開中だ。劇場版第26作目となる本作は、最新テクノロジーを投入したインターポールの海洋施設パシフィック・ブイを舞台にした海洋頂上決戦ミステリー。海上という“密室”を舞台にした謎解きに加え、黒づくめの組織に灰原哀の正体が暴かれるなど、かつてない展開を詰め込んだ極上作だ。そんな本作を監督したのが、シリーズ屈指の名作と称された前作『名探偵コナン ゼロの執行人』(18)の立川 譲監督。『デカダンス』(20)『BLUE GIANT』(23)など次々に傑作を手がけている立川監督に、2作目となる劇場版『名探偵コナン』に込めた思いやこだわりを聞いた。

 

劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影(くろがねのサブマリン)』

全国東宝系にて公開中 
©2023 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

 

STORY

東京・八丈島近海に建設された、世界中の警察が持つ防犯カメラを繋ぐための海洋施設『パシフィック・ブイ』。本格稼働に向けて、ヨーロッパの警察組織・ユーロポールが管轄するネットワークと接続するため、世界各国のエンジニアが集結。そこでは顔認証システムを応用した、とある『新技術』のテストも進められていた―。一方、園子の招待で八丈島にホエールウォッチングに来ていたコナンたち少年探偵団。するとコナンのもとへ沖矢昴(赤井秀一)から、ユーロポールの職員がドイツでジンに殺害された、という一本の電話が。不穏に思ったコナンは『パシフィック・ブイ』の警備に向かっていた黒田兵衛たち警視庁関係者が乗る警備艇に忍び込み、施設内に潜入。すると、システム稼働に向け着々と準備が進められている施設内で、ひとりの女性エンジニアが黒ずくめの組織に誘拐される事件が発生…!さらに、彼女が持っていた、ある情報を記すUSB が組織の手に渡ってしまう…。海中で不気味に唸るスクリュー音。そして八丈島に宿泊していた灰原のもとにも、黒い影が忍び寄り……。

決して触れてはいけない玉手箱(ブラックボックス)が開かれたとき封じ込めた過去がいま、洋上に浮かび上がる―

 

黒ずくめの組織の会話は青山剛昌先生に手を入れてもらいました

——前作『名探偵コナン ゼロの執行人』との差別化で意識した点、こだわった点をお聞かせください。

前作に比べて王道なコナンにすべく、プロット段階からメインキャラの活躍を繰り返し要望しました。脚本都合ではなく、キャラの感情で動くように注意を払っています。ゼロよりキャラが多い分、散漫な印象にならないように気をつけています。

——映画化にあたり、青山剛昌先生から要望やコメントなどあったのでしょうか。

特にありませんが、黒ずくめの組織の会話は全体的に手を入れてもらっています。

 

江戸川コナンと灰原哀は同じ運命を辿っている仲間として意識しました

——灰原哀が大きな位置を占めていますが、監督から見た彼女の魅力は何でしょうか?彼女がらみでお気に入りのシーンがあれば教えてださい。

灰原はクールな印象が強いですが、大切なものは命がけでも守りたいと思う、内側に熱い思いを持っている女性です。自分の命に危機が迫っていても、歩美ちゃん守ろうとするのが彼女の魅力です。劇中だと、あるキャラを強い言葉で鼓舞してるシーンが好きです。

——江戸川コナンと灰原哀の関係性を描く上で意識したことを教えてください。

これまでの2人の関係性を守るのが大前提。映画では同じ運命を辿っている仲間として、特に海中での2人のシーンを印象的にすべく意識しました。

——灰原哀に向けた江戸川コナンの行動と表情がとても刺さったのですが、こだわったことがありましたら教えてください。

どれもコナンはカッコいいので甲乙つけがたいですが、とあるシーンの回想コナン君は、灰原目線で新作しています。塗りも原作のカラーイラスト風になっていて、表情もこだわりがつまっています。

——本作で新しく登場したピンガについて立川監督からみた印象を教えてください。

これまでのキャラと差別化が必要だったので、情にほだされる事のない、悪に徹した人物像になっています。ジンとの確執が描けなかったのは残念ですが、コナンが挑発しているとおり組織のチンピラみたいなイメージです(笑)。

 

見るべきポイントが多すぎて感情が追いつかなくなるのが『コナン』の魅力

——パシフィック・ブイを描くにあたりモデルにした施設や機関はありますか?

建設会社が作成したイメージ海中都市を参考にしています。デザイン面は大幅に違いますが、設定のベースになっています。内部が広く、人の手で書くには難しいのでCGでレイアウトをとってから、キャラを描いています。

——潜水艦のリアルな描写に圧倒されましたが参考にした映像などあれば教えてください。

潜水艦の映画はいろいろ見ましたが、ベースなっている潜水艦は海上自衛隊の「おやしお」です。分からないところだらけだったので、元艦長さんから構造などのレクチャーを受けて、設定を作りました。機密情報で公開されてない部分はオリジナルで足しています。

——劇場版2作目になりますが監督が感じる『名探偵コナン』の魅力をお聞かせください。

魅力ある大勢のキャラクターと様々な楽しみ方ができる懐の広さです。これだけ老若男女から愛されるコンテンツもそうそうないです。見るべきポイントが多すぎて、感情が追いつかなくなる場合がありますが(笑)。今回監督してみて、もっとシンプルでも『コナン』の面白い要素は表現できると思いました。

Profile

立川 譲

1981年生まれ。日本大学芸術学部卒業。アニメ制作会社マッドハウスに入社。マッドハウス在籍時より演出を手がける。
その後フリーランスとなり、「BLEACH」「キルラキル」「進撃の巨人」などの絵コンテや演出を担当。
2015年は原作・脚本・監督を務めた「デス・パレード」が放送。2016年から放送の「モブサイコ」シリーズでは第1期から2期まで監督を務め、3期では総監督を務める。今年3月公開の映画『BLUE GIANT』でも監督を務めている。2018年には劇場版第22作目の『名探偵コナン ゼロの執行人』を監督し、本作がシリーズ2作目。
 
 

CAST

声の出演:高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也、林原めぐみ ほか

STAFF

原作:青山剛昌「名探偵コナン」(小学館「週刊少年サンデー」連載中)
監督:立川 譲 
脚本:櫻井武晴  
音楽:菅野祐悟 
アニメーション制作:トムス・エンタテインメント

©2023 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会