【スカルプターズ・ムービー】凶悪モンスターに特化した純モンスター・バトル大作『映画 モンスターハンター』

テキスト・神武団四郎

カプコンの大ヒットゲームを実写映画化した『映画 モンスターハンター』がいよいよ日本に上陸した。監督はポール・W・S・アンダーソン、主演ミラ・ジョヴォヴィッチと、やはりカプコンのゲームに基づく『バイオハザード』シリーズを成功させた夫婦コンビの最新作だ。ミラ演じるスゴ腕女兵士の相棒を演じるのは、『マッハ!!!!!!!!』で世界の度肝を抜いたトニー・ジャー。映画界最強アクション・コンビの誕生だが、それをしのぐ魅力を放っているのが凶悪な異世界モンスターたちである。

 

 

STORY

作戦行動中に砂漠で消息を絶った偵察小隊。その探索に当たっていたアルテミス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)率いる特殊部隊は、突然、激しい砂嵐に飲み込まれてしまう。砂嵐が去った後、彼らの眼前に現れたのは、未知なる世界の光景と…ありえないサイズの超巨大モンスター!! 近代兵器が通用しないモンスターの猛攻に、小隊は全滅寸前にまで追い込まれる。絶体絶命の危機を救ったのは、見慣れぬ装備を身にまとい、巨大な剣を携えた一人の男(トニー・ジャー)。彼はモンスターを狩るために戦う者=モンスターハンターであった。
アルテミス達はなぜ、モンスターが跋扈する世界にやって来たのか? 元の世界に戻る方法はあるのか? すべての真実を知るためには、次々襲来する巨大モンスター達を倒し、生き残るしかない。狩るのは人間か? モンスターか!? 究極のサバイバルがいま始まる!

 

REVIEW

本作に登場するのは、砂漠に棲息するディアブロス亜種、夜行性のネルスキュラ、ラスボスの火竜リオレウスといった「モンハン」の人気モンスターたち。ゲームにハマりカプコンに映画化を打診したアンダーソンは、自らのこだわりやファンの人気度、映画として“映えるか”を基準にモンスターをセレクトしたという。視覚効果監修は『バイオハザード』シリーズなどアンダーソン作品の常連であるVFX工房ミスターXのデニス・ベラルディで、今作では製作も兼任。モンスターたちはゲームのビジュアルを重視しつつ、ゾウなど実在の生き物を参考に骨格や筋肉、動きをシミュレート。リアルな存在感をめざしたという。

 

砂漠で異世界に迷い込んだ特殊部隊のアルテミス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)と、孤高のハンター(トニー・ジャー)の脱出劇を描く本作、彼らの前に立ちはだかる宿敵がディアブロス亜種である。ふだんは砂漠の地中に棲息し、振動をキャッチすると猛スピードで砂の中を移動して獲物を狙う捕食者だ。水しぶきのように砂を舞い上げながら、勢いよく地中から飛び出す様は陸のジョーズ。二匹が砂漠を併走しながら帆船を襲撃する、プロローグのスペクタクルも見ごたえがあった。


『バイオハザード』シリーズのミラ・ジョヴォヴィッチ、『マッハ!!!!!!!!』で世界の度肝を抜いたトニー・ジャーが最強コンビを結成。

 

ディアブロス亜種はそのデザインも個性的。砂や地中に棲息するモンスターはこれまでいくつもの映画やTVに出てきたが、そのスタイルは移動時の抵抗が少ない流線型や細身のものが多かった。しかしディアブロス亜種は完全な獣系、しかもかなりゴツい。頭部に湾曲した2本の角を持ち、首にはトリケラトプスを思わせる大型フリル、肘に鋭い突起のついた両腕(前足)も胴体に負けないほどのぶっとさだ。そんな巨体でどうやって地中を高速移動してるのか、想像するだけで楽しくなる。地上に出現したあとも俊敏で、肉食竜を思わせる前傾姿勢で獲物を追走。憎々しい面構えを含め、もっとも“怪獣”らしいモンスターである。


「モンハン」を代表するモンスターのひとつディアブロス亜種。砂漠から脱出しようとするアルテミスとハンターを阻む宿敵。

 


スピード感、重量感あふれるアクションが味わえるディアブロス亜種は、デザインを含めもっとも“怪獣”らしいモンスター。

 

ディアブロス亜種から逃れ、岩場にたどり着いたアルテミスらを群れで襲撃するのがネルスキュラ。複眼と長い足を持つクモに似たモンスターで、尻尾にはサソリのように毒針がある。強い光が弱点で、昼間はけっして巣穴から出てこない。動きは敏捷でところかまわずはいまわり、音も立てずにターゲットを絡め取る。クモの糸で作られた部屋のような房がならんだ巣を見ると、高い知能も持つようだ。

夜になるとネルスキュラは大群で狩りをはじめるが、その目的はエサにするだけでなく、卵を産み付ける寄主の確保。そんな彼らに捕獲されたアルテミスらの脱出劇はグロ指数も高いので、心して観てほしい。ちなみにアンダーソンいちばんのお気に入りがこのネルスキュラで、遺伝子レベルで嫌悪感を抱かせるところが“悪役”にうってつけなのだとか。


光を嫌い、闇に紛れ群れをなして行動する昆虫型モンスターのネルスキュラ。ハンターの巨大な件の一撃で“断面”も披露する。

 

クライマックスで大暴れするのが「モンハン」を代表するモンスターのひとつリオレウスだ。ファンタジーでは定番の火を吐くドラゴンだが、映画版リオレウスの魅力はその力強いデザインにある。短い鼻面と大きく開く強靱なアゴ、逆立つように反り返ったゴツゴツした鱗、巨大なかぎ爪のついた翼、T-Rexのような筋骨隆々の後ろ足などその威圧感は半端じゃない。短い尾の先のコブのようなクラブも破壊力がありそうだ。こいつが巨体を揺らして跳びまわり、豪快に炎を吐きまくるのだからたまらない。邪悪な目つきも印象的で、本能のまま暴れまわるディアブロス亜種とはまた違う狡猾な眼差しはまさにラスボスだ。


ラスボスは力強い翼で大空を駆ける、邪悪な火竜リオレウス。近代兵器を余裕で木っ端みじんにする暴れっぷりはお見事。

 

ほかにも、アンキロサウルスを思わせる温和なアプケロスが大群で登場。砂中に潜む小型の捕食竜ガレオス、巨竜ゴア・マガラも登場するのでお楽しみに。主要人物を最小限に絞り、モンスターとのバトルに特化した『映画 モンスターハンター』。一点突破で勝負した潔さこそ本作いちばんの魅力なのだ。


水辺に集まったアブケロスの集団。温厚な草食竜タイプだが、リオレウスの襲撃を受け群れで暴走するスペクタクルは圧巻。

 

CAST

ミラ・ジョヴォヴィッチ/トニー・ジャー/ティップ・“T.I.”・ハリス/ミーガン・グッド/ディエゴ・ボネータ/山崎紘菜 and ロン・パールマン

 

STAFF

監督・脚本:ポール・W・S・アンダーソン
原作:「モンスターハンター」(カプコン) 
製作:コンスタンティン・フィルム/テンセント・ピクチャーズ/東宝 
配給:東宝=東和ピクチャーズ共同配給

 

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