【CHARA MAKING LAB 】vol.17 造形作家&デザイナーユニット・Hanamusic「ムームー」「たわし」「さし美」「とげまる」

オリジナルソフビ・キャラクターを制作・販売するクリエイターたちの創作の裏側に迫る連載企画「CHARA MAKING LAB」。
第17回は、ソフビ作家・Hanamusic氏。
自身が手がけるキャラクター「ムームー」「たわし」「さし美」「とげまる」について、誕生のきっかけからデザインのこだわりまで、その制作の裏側を伺った。
まずはインタビューに先立ち、「ムームー」「たわし」「さし美」「とげまる」たちのプロフィールを紹介!
「ムームー」Profile

名前
「ムームー」(ミカヅキツノゼミ)
綱:昆虫綱
目:カメムシ目
科:ツノゼミ科
サイズ
縦152×横69×高140mm
設定
宇宙飛行士になるのを夢見て、いつも空想の世界で空を飛んでいる。翅はあるが頭が重くて飛ぶことはあまり得意ではないので、ロケットを操縦したいと考えている。
住んでいるところ
ゆうがお団地
「たわし」Profile

名前
「たわし」(ツノゼミの幼虫(種類は不明))
綱:昆虫網
目:カメムシ目
科:ツノゼミ科
サイズ
縦97×横60×高83mm
設定
大きくなったらどのツノゼミになるのか、まだ誰にも分からない。幼虫は卵から孵ったらツノゼミのコロニーを管理するヤクショツルクサに自分で出生届を出しに行く。
住んでいるところ
ヤクショツルクサの先端
「さし美」Profile

名前
「さし美」(カンザシツノゼミ)
綱:昆虫綱
目:カメムシ目
科:ツノゼミ科
サイズ
縦114×横65×高139mm
設定
さし美はツノゼミ界のファッションリーダー。靴が大好きなのに脚が6本あるため3セットも同じものを買わなければならないことが残念で、将来は昆虫用の靴屋さんになりたいと考えている。
住んでいるところ
がりつまが丘
「とげまる」Profile

名前
「とげまる」(バラトゲツノゼミ)
綱:昆虫綱
目:カメムシ目
科:ツノゼミ科
サイズ
縦130×横77×高92mm
設定
バラトゲツノゼミのとげまるは、7匹兄弟の末っ子。西洋アンティーク好きの母親の影響でティーカップが大好きなのだが、時々それらを持ち出して遊んでは叱られている。
住んでいるところ
ちくわ公園
INTERVIEW
——初めてオリジナルキャラクターを制作されたのはいつ頃でしたか? ソフビを制作しようと思われたきっかけを教えてください。
元々は、キャラクターというよりもメキシコの民芸品やアフリカの仮面に影響を受けながら、海の生き物や昆虫をモチーフにしたオブジェを制作していました。
ソフビ制作を始めたきっかけは、その一点物の立体作品をプロダクトのような形で展開できないかと考えたことです。複製方法を模索する中で、CNC木工旋盤や張り子なども試しましたが、最終的にソフビへ辿り着きました。
初めて木工で作ったキャラクターはとげまるで、その後さし美を制作しました。設定やデザインを試行錯誤しソフビとなったツノゼミシリーズも、キャラクターとしての楽しさを持ちながら、どこか民芸品やオブジェのように棚に自然と馴染む存在を目指しています。

さし美木工

さし美の木工制作
——幼少期から昆虫がお好きだったのでしょうか?
一緒に制作している夫のほうは子供の頃から昆虫が好きだったよう
——ツノゼミ科の昆虫たちを好きになったきっかけを教えてください。
ツノゼミだけの図鑑がきっかけです。ツノゼミだけでこんなに奇抜な形のたくさんの種類がいることを知り、一気に魅了されました。
「ムームー」について。
——モチーフに「ミカヅキツノゼミ」を選ばれた経緯を教えてください。
ツノゼミには奇抜な形のものがたくさんいるのですが、ソフビにするために金型から抜ける形状のキャラクターを選びました。
そこから少しずつフォルムや設定を調整していって、今の形になっています。
落描き段階では全く違う設定や形をしていたり、アイデアだけで止まっている謎のキャラクターもいたりします(コツツボアリ、星売りニセナナホシテントウ…いつか実現させたいです笑)。

ムームーの初期ラフ
——「ミカヅキツノゼミ」が魔女の顔のように見えることから、帽子をかぶったようなデザインにされたのでしょうか。
実は帽子の部分は、ソフビ化する際の分割ラインを目立たなくするために考えたものでした。
当初は構造上の理由から生まれたデザインでしたが、結果的に帽子をかぶっているようなシルエットがキャラクター性を強める要素になったと感じています。
こだわったのは全体の曲線です。ツノゼミの不思議な形を活かしながら金型から抜けるラインと、どの角度から見ても柔らかくまとまるように意識しました。
——スタンダードカラーのドット柄がとても印象的ですが、この配色にされた理由を教えてください。
ドット柄は、石粉粘土で一点物作品を制作していた頃から繰り返し使っているモチーフです。そのため、ソフビとして立体化する際にも自然な流れで採用しました。
ボディには月を連想させるイエロー蓄光成形色を使用しています。さらに、ドットやストライプの配色バランスを調整することで、どこか懐かしさのあるレトロなポップさを表現しました。

——名前の由来を教えてください。
初めはミカヅキンから連想ゲームがスタートし、三日月→ムーン→ムームー・・・と変化していき、言葉遊びのようなかたちで決めました。
「たわし」について。
——ツノゼミの幼虫にもさまざまな個体がいますが、このデザインにたどり着いた経緯を教えてください。
ツノゼミ幼虫たわしを制作した当時は、現在ほどツノゼミ幼虫の情報が多くなく、どの幼虫がどの成虫になるのかわからないものもたくさんありました。
そこで特定の種類の幼虫を再現するのではなく、さまざまな幼虫の資料を集め、その特徴を組み合わせながらデフォルメしてデザインしています。
そのため、たわしは「何になるのか分からないツノゼミの幼虫」というイメージで制作しました。こだわったのは、実在の昆虫らしさを残しつつも、見慣れない不思議な生き物として成立するバランスです。

——お尻の造形も印象的ですが、こだわりがあれば教えてください。
お尻は意外とこだわったポイントです。幼虫らしい柔らかさが感じられるよう、プリッとした丸みとムチっとしたボリューム感を意識しました。
個人的にも気に入っている部分なので、そこに注目していただけて嬉しいです。

たわし制作中
——名前の由来を教えてください。
名前の由来は見た目そのままです。制作中から「たわし」みたいだなと思っていて、自然と「たわし」と呼んでいたので、そのまま正式な名前になりました。
「さし美」について。
——頭の上にある丸いパーツには、どのような意味や役割があるのでしょうか。
実は、この丸いパーツの正確な役割はまだよくわかっていないようです。
ツノゼミの仲間には不思議な形の突起を持つ種類が多く、捕食者への威嚇や擬態など様々な説があります。きっと何かに擬態しているのではないかと想像しながら制作しました。
——足の太さや左右の表情の違いがとても魅力的ですが、デザイン時に意識されたことを教えてください。
足の太さや左右差に限らずキャラクター全てに共通しているのですが、温かみのある柔らかなフォルムを意識しています。
少しムチムチとした生命感のある形が好きなので、その感覚が足の造形にも表れていると思います。

さし美
——羽のような部分をドット柄にされた理由を教えてください。
カンザシツノゼミでは、シンボルでもあるドットを翅のような部分に配置することで、全体のリズムや色のバランスを整える役割を持たせています。

さし美初期ラフ
——制作過程で印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
ワンダーフェスティバルでの発表を目指して制作を進めていましたが、ちょうどコロナ禍と重なり、制作進行だけでなく発表の場にも大きな影響がありました。
イベントの中止に伴い、予定を変更してオンライン販売を一から始めることになったため、作品制作以外の面でも多くのことを学ぶきっかけになったと感じています。
——名前の由来を教えてください。
名前の由来は「カン ザシ ツノゼ ミ」です。
声に出しているうちに「さし美」という響きが妙にしっくりきて、そのまま採用しました。特別な意味というより、音のリズムや勢いから生まれた名前です。
「昆虫なのにSashimiなの?」と面白がっていただくことも多く、キャラクターを覚えてもらうきっかけの一つになっているように感じています。
「とげまる」について。
——特徴的な模様のデザインは、どのような発想から生まれたのでしょうか。
ツノゼミ図鑑に掲載されていたバラトゲツノゼミをモチーフにデフォルメしています。

とげまる柄のイメージ
——顔や足のデザインにも個性がありますが、こだわったポイントを教えてください。
このキャラクターは、ソフビになる前に一度木工旋盤で作品として制作したことがあります。
その時のイメージをそのまま引き継いでいるため、顔や脚、全体のフォルムには木を削り出した置物のような雰囲気が残っています。
——スタンダードカラーをこの配色にされた理由を教えてください。
実際のバラトゲツノゼミの色や模様を参考にしながら、ソフビとして見た時に色の切り替えが映えるようにデザインしました。
特にトゲの緑色と本体のオレンジ色の境界をL字型に分割している部分は気に入っているポイントです。

——名前の由来を教えてください。
実は、最初は「ちくわ」という名前にしようとしていたのですが、すでに似た名前のソフビ作品があることを知り、別の名前を考えることになりました。
トゲのある生き物ですが全体のフォルムは丸みがあり、その見た目から「とげ」と「まる」を組み合わせて「とげまる」と名付けました。
——色のバランスを考える際に、意識されていることはありますか。
色数は比較的多い方だと思いますが、安定感のある組み合わせをベースにしながら、心地よい程度の違和感を加えることを意識しています。
見慣れた配色の中に少しだけ引っかかりを作ることで、長く見ても飽きない色の組み合わせになればと思っています。
——オリジナルキャラクターを制作される際に、一番大切にしていることは何ですか?
手にしてくださった方が、それぞれのストーリーを自由に想像できる余白を残すことです。
また、造形としては気持ちの良い曲線を大切にし、シンプルな中にハナムシックらしいシルエットを出すことを一番に考えています。
——今後挑戦してみたいこと、展開してみたいグッズ、目標などがあれば教えてください。
挑戦してみたいことなのですが、今、セラミックによるオブジェ制作に取り組んでいます。
これまで一点ものの石粉粘土作品や、アートトイとしての量産型ソフビを制作してきましたが、今は改めて焼き物という表現と向き合っています。
陶芸は本当に奥が深く、思い通りにならないことも多いのですが、その分発見も多く、表現の幅を広げてくれる素材だと感じています。まだ学ぶことばかりですが、今後もじっくり取り組んでいきたいです。
また、最近トゥリホパ人の「まつたけのすけ」と「ぷこぷこ」という新たなシリーズをリリースしました。今後は彼らの住む世界を広げ、様々な展開をしていきたいと考えています。
——いち早く入手できる方法を教えてください。
ソフビの販売に関してはインスタグラムとXで告知をしています。
ぜひチェックしていただけたら嬉しいです。また、9月にスタジオソータ様よりカプセルトイとボックストイが発売されます。
そちらに関しては、スタジーソータ様のSNSで最新情報をご確認いただけます。
——最後に、ファンの皆様にメッセージをお願いいたします。
いつも作品を見てくださり、本当にありがとうございます。自分たちで生み出したものが思いもよらない形で誰かの日常の一部になったり、それぞれの解釈や思い出と結びついていくことがあります。キャラクターを手にしてくださった方が、それぞれの楽しみ方やストーリーを見つけてくださっていることを、とても嬉しく思っています。これからも試行錯誤を繰り返しながら、新しい作品やキャラクターを生み出していきたいと思いますので、楽しんで見ていただけたら嬉しいです。
Profile
Hanamusic
造形作家とデザイナーのユニットです。ポップな色と質感のソフビと、物質的な重さを伴う立体作品。アートとトイの境界を横断しながら、