【ウルトラ怪獣ホビー列伝】第三回「ポピー キングザウルスシリーズ ペスター」

テキスト:藤本圭紀
第三回!コラム・ウルトラ怪獣ホビー列伝!
前回取り上げた「バンダイ ウルトラ怪獣シリーズ」。
その前身ともいえるソフビ人形「ポピー キングザウルスシリーズ」より、今回はペスターを取り上げる。
この怪獣は筆者が“物心ついて初めて好きになった怪獣”ということもあり、私情多めで書かせていただこうと思う。
※本コラムで紹介されている「ポピー キングザウルスシリーズ ペスター」は販売を終了しております。
リバイバルブームの中で
キングザウルスシリーズの販売開始は1978年である。当時、実写の新作ウルトラマンシリーズは制作されていなかったが、テレビでの再放送が全国的に好評を博し、いわゆるリバイバルブームが起きていた。その流れの中で『ザ☆ウルトラマン』や『ウルトラマン80』が制作され、結果として第三次怪獣ブームとも言える盛り上がりを見せることになる。キングザウルスシリーズは、まさにその時代の空気の中で発売された商品だった(このあたりの経緯については、『フィギュア王プレミアムシリーズウルトラソフビ超図鑑』に詳しい)。
しかし残念ながら、それは私が生まれる数年前の出来事である。物心ついた頃、店頭で目にしていたのは「バンダイウルトラ怪獣シリーズ」であり、キングザウルスシリーズの姿はすでになかった。
一冊の絵本
私がキングザウルスシリーズの存在を知ったのは、いとこのお兄さんからのおさがりでもらった一冊の絵本がきっかけであった。
それは絵本というよりも児童向け写真集、講談社より出版されていた『おもちゃブック3 ウルトラかいじゅうずかん 全42体』である。当時発売されていたキングザウルスシリーズのソフビ人形を撮影し、図鑑仕立てにした何とも心くすぐられる内容だ。そこに掲載されていた怪獣人形たちの中で、特に私の心をつかんでいたのが「ペスター」である。


当時所有していたものはボロボロでさすがに残っておらず。この画像は後年探し当てたもので、入手した時の喜びは格別であった。
『おもちゃブック3 ウルトラかいじゅうずかん 全42体』(講談社)©️円谷プロ
ペスターとの出会い
当時『ウルトラマン』本編は、いとこが録画してくれていた再放送によって14話までは履修済みであった。
劇中、海から出現するぶよっとした質感、製油所に上陸して明らかになる巨大な全身。ご存じのようにペスターは二名の役者が横並びで演技する、ヒトデが連なったようなデザインの怪獣である。ちょうど役者の頭部に位置する箇所が一対の「山」のようになっており、それが「顔のない顔」に見えることがあるのだ。まるでのっぺらぼうのような表情のない不気味さ、それもペスターの魅力である。ペスターとの出会いは本編が先か、このソフビ人形の写真が先か、今となってはわからない。
しかしながらあからさまな異形、他の怪獣とは様子の違うそのデザインに、幼い頃の私は夢中であった。「おもちゃブック」を眺めては、日に日にページの向こうに存在しているペスターへの「手に触れたい」欲求が増していく感覚を今でも鮮明に覚えている。しかし自分の知っているおもちゃ屋さんにはペスターはおろか、この本に掲載されている人形たちなど影も形もない。
見知らぬおもちゃ屋さんでペスターを発見する…そんな夢まで見てしまうほどに憧れ続けたペスター人形であった。願いが叶うのはそれから十数年後。学生時代、アンティークショップでついに出会えた感動は言うまでもないだろう。

このページである。写真からでも伝わるペスターの質感と出来の良さにくぎ付けであった。裏側に厚紙を張り重ねて切り抜けば、立体物として手にすることができるのではないだろうか……幼少期ながら本気でそんなことを考えていた。
『おもちゃブック3 ウルトラかいじゅうずかん 全42体』(講談社)©️円谷プロ

このペスターはキングザウルスと同時期に発売されていた、ポピー の怪獣消しゴムである。こちらもおさがりで所有しており、辛うじてペスターの立体物への欲求を支えてくれていた。全高2cmほど、母親に抱かれながらこのペスターを握りしめていた記憶は今も鮮明に残っている。
©️円谷プロ
造形の魅力と、ひとつの弱点
閑話休題。ここからは、このペスターの造形をじっくり見ていこう。
キングザウルスシリーズで初の立体化となったペスターは、ディフォルメされてはいるものの、その造形には目を見張るものがある。可動箇所は中央の顔部分のみだが、先ほど触れた「一対の山」には左右それぞれに微妙な変化がつけられている。可動数は少ないにもかかわらず、「意思」と「動き」の両方が巧みに表現されており、退屈さを感じさせない造形となっている。
そして、本モデルにおける最大の見どころは「腹部」である。キャラクターモデルの造形において重要なのは、「共通言語」の再現だと私は考えている。ここで言う共通言語とは、見る人が無意識に「これだ」と感じ 取っているイメージの核のようなものだ。
ペスターで言えば、それは「パンパンに張った腹部」である。劇中、とくに海上に姿を現した場面などでは、スーツ内部の空気が膨張し、 腹部の青い部分が大きく張り出して見える。まるでカエルの腹のような質感が、得体の知れない生物感を強く演出している。
本ソフビは、そのペスターの腹部を実に見事に再現しているのだ。このソフビを見るたびに、“そうそうこれこれこのお腹だよな、ペスターって“と思わされる。それこそが、「共通言語の再現」である。


腕や足にも動きが感じられる造形。各部のバランスも実にうまくまとまっている。
©️円谷プロ

ぷくっとしたお腹の造形が感じられるだろうか。これを再現しているペスターの立体物は、実は少ない。
©️円谷プロ
このお腹を包み込むように内側へ向けた両腕も、ペスターのぶよっとした柔軟な質感を表現しているようで魅力的である。
身体前面の放射状のリブ、背面のタイルを敷き詰めたようなモールドも丁寧に造形。そして身体中央の顔の愛嬌。このペスターはキングザウルスシリーズの中でも高い完成度を誇るアイテムだ。

なんとも良い顔である。カン着による単純な回転可動がこれほど“効く”のも珍しい。
©️円谷プロ

タイル状のモールドが心地よい背面。左右それぞれの個性が感じ取れるようで面白い。裏表でこれほどイメージが変わるのもペスターの魅力だろう。
©️円谷プロ
しかしながら弱点もある。サイドから見ると一目瞭然、「薄い」のだ。ぺったんこである。
形状が形状だけに、ソフビという素材の性質上どうしても薄くなってしまうのだろう。個体差もあるかもしれないが、気になる向きには発泡スチロール片などを入れてやれば多少のボリュームは稼げるかもしれない。

ペラペラである。経年によって可塑剤が抜け、より収縮してしまった可能性も考えられる。
©️円谷プロ
色と記憶
キングザウルスシリーズは、カラーリングにも独自の魅力があり、非常に個性的である。
それまでのマルサン・ブルマァク系の柔らかく優しい造形、そして後年のバンダイソフビのしっとりとした質感と比べると、彫りは深く、どこか荒々しい。ごつごつとしたザラつきのある体表は、ソフビという素材と相性がよく、カラフルなスプレー、とりわけメタリック塗装では、光が乱反射しているかのような錯覚を覚える。
フィンガーチョコレートを包む銀紙を連想してしまうのは私だけだろうか。それは、クリスマスツリーの飾りを眺めているときのような、特別な高揚感に近い。
幼い頃、夢にまで見たペスター。そのペスターをラインナップに含んでいたキングザウルスシリーズは、今もなお私にとって特別な存在であり続けている。

おもちゃブックで出会い、長い年月をかけて少しずつ我が家にやってくる憧れのキングザウル スシリーズ。この独特の質感、伝わるだろうか。
©️円谷プロ

オマケとして紹介する「バンダイ ウルトラ怪獣シリーズペスター」(2003年発売)。高い完成度だがネックはその小ささ……だったのだが後年、サイズが縮小された同シリーズのソフビ(写真はカネゴン)と並べてみると、一転してボリュームあふれる存在に。並べる世界によって決定されるサイズ感。このあたりも、いずれ改めて考えてみたいテーマである。
©️円谷プロ
藤本圭紀 Yoshiki Fujimoto Profile
ふじもと・よしき
1983年、大阪市生まれ。千葉県在住。
