韓流フィギュア最前線! リアルフィギュアの極点

テキスト・寅

リアルフィギュアを極めた先……それはもはやアートなのか?
いま、アジアで最も注目されているフィギュア・メーカー、JND STUDIOS。今年創立されたばかりのJNDは、世界最高レベルにリアルな限定品フィギュアを制作・販売している。JNDのメインスタッフはHot Toys出身のkojun。韓国国内で初めて、ワーナー・ブラザーズのライセンスを取って映画『ジョーカー』(2019)よりジョーカーを制作した。

ここで、韓国のリアルフィギュアの歴史を振り返ってみよう。

韓国では2000年代頭にリアルフィギュアがマニアの間で流行し、web上でリアルフィギュア専門のコミュニティができた。ただ、当時はまだ数も少なく、顔が似ていないなどクォリティが低いものがほとんど。韓国内の市場も日本とは比べ物にならないほど小さく、フィギュアの会社も1社あるかないかだった。

その後、リアルフィギュアの顔を自分でカスタムしたり、オリジナル作品まで作るコレクターが現れ始め、そこからアマチュアフィギュア作家が誕生し始めた。彼らが香港のHot Toysなど有名な会社に入り、活躍するようになったことで世界的にリアルフィギュアがブームとなったのだ。

代表的な人物としてはブルース・リーとインディアナ”・ジョーンズを作って有名になり、香港のENTERBAY立ち上げメンバーのArnie Kim やHot Toysで活躍したのち、韓国でJND STUDIOSの設立メンバーとして活動をしているkojunなどがあげられるだろう。

kojunのアル・パチーノやジャック・スパロウなどは非常に話題になり、この世界的ブームによって、韓国でも一部のマニアの間でしか認知されていなかったリアルフィギュアが広く人気となる。今ではテレビドラマの美術やインテリア小物として認められるようになった。

韓国では、クオリティの高いリアルフィギュアは値段もモダンアート並になって、今後ますます伸びていく市場だろう(ちなみにヘッド1個で高いものだと30万程度、フルセットでは70万程度)。

しかし、基本的には完成品の販売ではなくプロトタイプを作って予約販売となるため、ライセンス契約で時間がかかったり、作家の都合で何年もかかる場合もある(私は未だに12年ほど待っています!)。この問題を含め、まだまだ解決しなければならない課題は多い。

個人的には韓国のリアルフィギュア作家が、その高い技術を活かして日本のアーティスト野口哲也のようにオリジナルの作品でモダンアートの世界に勝負してみて欲しいと思っている。

 

 

  

Arnie Kimによるインディアナ”・ジョーンズ(右)とブルース・リー(左2つ)。Arnie Kimのインスタグラムより。

  

kojunによる、アル・パチーノ。kojunのインスタグラムより。

 

 

寅(とら)

韓国出身、ロサンゼルス在住のフィギュア制作者&コレクター。