【スカルプターズ・データベース】フィギュアの吐息までペイント!凄腕フィニッシャー 田川弘

フィギュア、ゲーム、CM、映画、そしてアートのジャンルで最も造形力のあるスカルプター・原型師を集めた、最新データベース創刊!

【2023/7/11更新!】リアルフィギュアの超絶ペイント
田川 弘 Profile


田川 弘とその手。

田川 弘 Profile

幼少の頃から絵を描くことを得意とする。高校・大学と美術系へ進む。洋画専攻。29歳の時、初めて応募した大きな公募展でいきなり「大賞」をもらう。
順風満帆に思えた画家への道も35歳で挫折。そのあとで出会ったガレージキット(リアルフィギュア)にハマり、2011年頃から本格的にガレージキットのフィニッシュを開始。個展グループ展を開始&参加しながら現在に至る。

 

最新作

一殿堂「ReaL」 1/7scale 原型:林浩己

キット発売前に作例を頼まれて完成させました。
キットの発案者は中国の方。体に障害を持った人をテーマに、障害を感じさせない真っ直ぐな生き様を表現してもらえないか?その考えに共感した原型師が形を起こし、日本と中国の実力派塗装師10人がそのキットを組み立て塗装して作品を作り上げました。その作品は中国の有名カフェ店で展示され、フィギュアをアートとして捉えている人が多い中国で、数多くのニュースで取り上げられました。

 

「which-05」 1/12scale 原型:林浩己

キットの発売前に作例を頼まれて完成させたのですが、最初にキット内容を見せられた時、「うわ…これは難しいな…」、そう思いました。ごく普通の少女が普通の水着を着て、普通のポーズでただ立ってるだけ…そう、見せ場がない!!どうやって自分らしさを表現する???やだやだこんなの作りたくなーい…。

ところがね、作成してみると違うんです。初々しいっていうか…この子って、そのへんの子たちと違う!!って思うようになりました。

どんどん感情移入しちゃって、最後はこの子に恋をしたみたいな…この笑顔にそういう感情を感じていただけるような作品に仕上がったと思います。
 

「HQ06-02」1/6scale 原型:林浩己

2002年頃アトリエイットから発売されたヌードフィギュアの復刻版。
2022年に同原型師、林浩己氏によって細部まで手直しされ再販された。
ヌードは体の形の狂いを着衣などで誤魔化せないので、とても難しいと思います。
そういうことを微塵も感じさせない林氏の造形。本当に素晴らしいです。
そのリアルなバランスを崩さないように、この作品はまつ毛の植毛&前髪の後れ毛の植毛を施しました。

 

「HQ08-02」1/8scale 原型:林浩己

実際自分でやってみるとわかるんですが、このポーズ、すごく小さくなるんです。
ちっちゃい~ちっちゃい~って感じ。ところが完成した作品を画像にしてびっくり。反対に大きく感じました。優しく包み込まれるっていうか…。女性のそういう部分をうまく表現できたのかな?だから大きく感じるのかな?と自負してます。傑作に仕上げることができました。これも林氏のキットだからそこまで表現できたのだと思います。
また、オリジナルはショーツを穿いているのですが、それを脱がせる改造を施し、体のラインの美しさをさらに引き出しました。この子もまつ毛&後れ毛の植毛をしています。

2022年で一番変化したこと

午前中自転車で走り、午後から作業をする。これがルーティーンになりました。
一日中作業部屋に閉じこもりがちなフィニッシャーとしての仕事ですが、肉体&ココロの健康も考えて、これは正解なのではないかと自負しています。

 

2022年で一番感動した作品

2009~2011年放映のTVアニメ『君に届け』にVODで出会う。
主人公の生き方に癒やされる。また、登場する他のキャラクターたちも大切に扱われていて、作者の温かい人間性を感じることのできる素晴らしいストーリーだと思います。原作の漫画、実写ドラマもおすすめ。

 

 

 

作品


「android EL01」 原型:K


「which-04(改)」 原型:林浩己

 


「篠崎さん」 原型:小抹香ke

 


「青春少女EX」 原型:林浩己

INTERVIEW

——小さい頃なりたかったものは?

漫画家です。幼稚園の頃から自分は他の人とは絵の表現力がぜんぜん違うと自覚していました(笑)。 

——最初に塗装したのはいつですか?

27年前かな? コトブキヤの「綾波レイ」、画像はありません。あっても恥ずかしくて載せられません。

——出身校と、学生時代にはまっていたものを教えてください。

名古屋芸術大学絵画科出身で、画家になるつもりでした。
学生時代は古典絵画にハマっていました。ラファエル前派やウィーン幻想派も好きです。

——いつ頃からフィニッシャーを目指しましたか?また、本格的に塗装した最初の作品を教えてください。

2017年、第三回目のフィギュアの個展を開催した頃です。本格的に塗装したのは1996年、フィギュア2作目、林浩己氏原型のレッズ「キューティーエンジェルコレクション 五樹美也子 17歳」です。

——使っている塗料の種類、愛用のツールなど。

油絵の具(kusakabe)をメインに、質感表現するために、ラッカーやエナメルも使用します。実体顕微鏡と日本画用の極細面相筆は、自分のトレードマークになっています。

——落ち込んだ時に聞く音楽、もしくは見る映像は?

映画『はじまりのうた』、アニメ『宇宙よりも遠い場所』『四月は君の嘘』。

——塗装する時一番こだわられていることは?

対象物への感情移入と、質感表現。そして、気分が乗らない時は絶対筆は握らない。

——現在、メインでお仕事されているジャンルは?

 フィギュアの製作代行です。時々、雑誌社などからフィギュア塗装の作例のお仕事を頂いています。

——今後の野望を教えてください。

オレは世界一のフィギュアフィニッシャーになる(笑)!

Data

作業スペース


作業デスクとその周辺

コレクション棚


ペイント作品などのコレクション


趣味のモデルガン

最近はまっているもの

自転車(ロード)週に3~4日、午前中、45kmを1時間45分ほどかけて走っています

影響を受けた(大好きな)映画・漫画・アニメ

宮崎駿監督作品『風の谷のナウシカ』、弐瓶勉『シドニアの騎士』、『四月は君の嘘』、『宇宙よりも遠い場所』。

1日に造形する平均作業時間

4〜8時間