圧巻の躍動感!『ブラック★ロックシューター HxxG Edition.』シャイニングウィザード@沢近原型制作インタビュー

HxxG氏イラストの「ブラック★ロックシューター HxxG Editon.」フィギュアがマックスファクトリーより予約開始!

まもなく15周年でますます盛り上がる『ブラック★ロックシューター』、今回は原型師のシャイニングウィザード@沢近さんに制作秘話をインタビュー!

 

INTERVIEW シャイニングウィザード@沢近

——『ブラック★ロックシューター HxxG Edition.』制作の経緯を教えてください。

グッドスマイルカンパニーの安藝(貴範)社長が直々に「この絵さ~ウィザードに合うでしょ?作んなよ」って言ってくれたのがはじまりですね(安藝さんはなぜか僕のことをウィザードと呼びます)。

 

——HxxGさんのイラストへのイメージを教えてください。

画から受け取ったのは「意志力 = ベクトルの力」「可憐で繊細な少女とハードな衣装」「ゴツいメカ」といったところだと思います。


HxxG氏によるイラスト

 

——立体化するにあたり、一番力をいれたところと苦労したところは?

主に人体、コート、炎ですね。
HxxGさんの画風だとリアリスティックな人体表現が可能だと思ったので、人体の解剖学的な部分とフィギュア的なダイナミクスを両立させたいと思いました。自分は専門的に学んだ経験はなく、人体の理解度に常々限界を感じていたので、今回は「片桐裕司彫刻セミナー」で指導を受けながらラフを作らせてもらいました。

コートはぱっと画を見た感じ、奥の方とかがよくわからない感じだったんですけど(笑)。でもそれはアウトラインさえ画から拾えばあとは好きにできるなってことです。自分の作ったコートは、一枚に広げたら実物としては成立しないと思うんですけど、服のパターンと呼ばれる構造的な部分やシワのできる原理はおさえた上で、実際にはありえないことを表現として作るのが楽しいです。

炎はディテールの集中と拡散を意識して、面で魅せられるようなカタチに、なるべく流麗にまとめようと努力しました。ベクトルの表現をする時って線の鋭角を利用して説明的な表現にいきがちですけど、自分の場合は面の鈍角の流れで魅せたいんですよね。


イベントで展示された原型。制作時間:7時間×20日×4ヶ月/使用ツール:ZBrush2021/3Dプリンタ:Form2/レジン:Formlabs Resin Clear V4

——普段イラストを立体化する時、一番気をつけていることを教えてください。

すべての商品に言えることなんですが、その商品のコンセプトが何なのかということを明確にして、そこからブレずに初志貫徹するように心がけてます。

商業原型ですと、まず画に似せるとかクオリティが高いということは当たり前で、それプラス何かを付加しなければならないのですが、今回の場合個人的なコンセプトとしては

  • おそらく価格は2~3万円コースなので、それに納得してもらえる構成にする。
  • 人体の解剖学的な部分とフィギュアとしてのダイナミクスを両立させる。
  • コートを造形物として面白い表現にする。
  • 瓦礫や炎の造形はやったことないから大変だな……どうしよう。
  • 過度なディテール表現は一切やらず極力シンプルにする。

こういったことを念頭に制作を進めました。
制作中は画を自分に引き寄せるというよりは、いかに作家の思考に近づけるか、寄り添えるか。そういった観点で制作しています。

たとえばの話ですが、おそらく脚のひねりの構造を理解してないんだろうなという画の場合はアウトラインは尊重して再現しつつ、内部的な構造は破綻しないようにまとめ上げたりしますね。

 

 

——筋肉、肌感、骨格など身体パーツそれぞれの造形でこだわられた点は?

今回のB★RSは女性ファンも多いのではないかと思ったので、女性から見てカッコいいとか共感してもらえそうなところを意識して作りました。

鎖骨や肋骨の造形を盛り込むことで脂肪感の少ない演出を。お腹は前屈してるけど脂肪やたるみではない筋肉と皮膚からくるシワ感を。骨盤はしっかりさせて女性らしさを。太腿のボリュームから締まった足首との対比などでメリハリも持たせています。

 

——目の炎の造形について教えてください。

こういった炎のような不定形分を作った経験があまりなかったので、当初結構困りました(笑)。
自分はもともと天才タイプではなくて、自分なりに理論を積み重ねていくタイプで、今回は世のクリエイターがどう解釈して作品にしているかを観察・分析した上でたどり着いたのが「書道」でした。トメ・ハネ・ハラエっていう概念で考えたらすんなり作れましたね。

 

——躍動感のある髪の表現で工夫したところを教えてください。

これも目の炎と一緒で書道の概念で作っています。書道を三次元でやってるイメージです。
髪のスジ的な表現は今回なるべく省いてシンプルにしようと決めていたので、面の変移で魅せられるようにしたつもりです。

 

——砕けちる床について。重力に逆らうデザインを再現するにあたり工夫したところは?

なるべくクリアの支柱を増やしたくないなという思いがあったので、B★RS本人~ベース~★Rock Cannonが円環状に連なるようにして、重量を支え合っている構成にしています。
細かい瓦礫なども画の特徴的な部分は拾いつつ、炎と絡ませて一体化するなどアレンジをしつつも、なるべく画から受けるイメージを損なわないように心がけました。

 

——★Rock Cannonの重量感の表現について教えてください。

厚みとエッジの面(C面)のとり方に気を使いました。
砲身はごっついけれど手元周辺のプレート部分などは多層構造感を感じさせるようなディテール表現を入れました。全体を通してプリミティブなものにしたいというコンセプトがあったので、伝わるギリギリで過剰なディテール表現は入れないように気をつけましたね。

 

——衣装について、立体化にあたりアレンジされた部分を教えてください。

ジッパーは、コートのモノとしての説明のためと、全体の構成としては少し寂しい感じがあったので画作りを締める意味でも、絵では描かれていないですが足しました。
その上で少女とハードな衣装の対比を強めるために、ジップの一コマを実際のスケール対比よりも強調しました。
特大の樹脂ジッパーがついているリュックがあるんですけど、街で女の子が持っていて可愛いかったので、そこからヒントを得てますね。

ヒールも人物との対比で、ソリッドで硬質なものとして、ヒール断面やつま先からヒールへのつながりの曲率にかなり調整を入れました。でもトゥが丸いのは少女性かな、と思います。
このヒール高を履きこなしているこの娘カッコいいねって、イメージしながら作りました。

 

——イラストで見えていない部分の造形はどのようにされたのでしょうか?

見えてない部分は基本想像です。
基本的にはHxxGさんの画一枚しかない状態で、原作のhukeさんが描かれたB★RSの設定は参考程度にとどめています。フィギュアの場合、人間・服・小物などの要素は実物が存在しているものですので、構造や概念を理解できていれば絵に描かれていなくても想像はできますよね。

あとは全体の構成というマクロと、人体や服といった一つ一つのミクロな要素を行ったり来たりして構築していけば、自ずとキマってくるものだと思っています。

 

——フィギュアを楽しみにされている皆さんに一言お願いします!

今自分にやれることは全部できたなと思える作品に仕上がりました。これを見てくれた人の心を動かすことができたら嬉しいです。

 

PROFILE

シャイニングウィザード@沢近

小学生の頃にYMOとホビージャパンに出会い、以降テクノとガレージキットに傾倒する。
1997年に原型制作を開始。1999年、アマチュアディーラーとしてワンダーフェスティバル初参加。
2008年に株式会社マックスファクトリー所属原型師となる。代表作に『初音ミク TYPE2020』『太陽の巫女 タマヨリヒメ』『初音ミク mebae Ver.』など。

 

商品情報

『ブラック★ロックシューター HxxG Edition.』

  • 仕様:プラスチック製 塗装済み完成品・1/7スケール・専用台座付属・全高:約300mm/横幅:約360mm
  • 上代:27,500円(税込)
  • 発売元:マックスファクトリー
  • 販売元:グッドスマイルカンパニー
  • 原型制作:シャイニングウィザード@沢近(マックスファクトリー)
  • 彩色:広瀬裕之(デコマスラボ)
  • 発売:2023年8月予定

©ブラック★ロックシューター
Illustration by HxxG