【スカルプターズ・ムービー】『THE BATMAN -ザ・バットマンー』バットモービルが“マッスルカー”にデザインされた理由とは?

テキスト・神武団四郎

DCを代表するヒーロー、バットマンの活躍を描いた『THE BATMAN -ザ・バットマンー』が公開中だ。『クローバーフィールド/HAKAISHA』(08)や『猿の惑星: 聖戦記』(17)のマット・リーヴス監督・脚本による今作は、生まれ変わった新生「バットマン」の第一章。ゴッサム・シティにはびこる犯罪と戦う“暗闇の騎士”が、真のヒーローとして覚醒するまでが描かれる。

 

『THE BATMAN-ザ・バットマン-』

2022年3月11日(金)全国公開 ワーナー・ブラザース映画
© 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & © DC

 

STORY

世界の《嘘》を暴け。本性を見抜け。 

優しくもミステリアスな青年ブルースは、両親殺害の復讐を誓い、夜は黒いマスクで素顔を隠し犯罪者を見つけては力でねじ伏せ、悪と敵対する存在の“バットマン”になろうとしている。ある日、権力者が標的になった連続殺人事件が発生。その犯人を名乗るのは、史上最狂の知能犯リドラー。ヤツは犯行の際、必ず“なぞなぞ”を残し、警察や世界一優秀な探偵のブルースを挑発する。いったい何のために犯行を繰り返すのか?そして暴かれる、政府の陰謀とブルースにまつわる過去の悪事や父親の罪…。追い詰められたその時、彼の心の中で、何かが音を立てて壊れ始めた―。あなたは世界の嘘を暴き、人間の本性を見抜けるか――。

 

REVIEW

特殊なパワーや能力を持たない生身のヒーローであるバットマンに欠かせないのが、スーツやウェポン、ビークルといった装備の数々。莫大な財力にものをいわせ、最新テクノロジーを惜しげもなくつぎ込んだ秘密兵器は誕生以来「バットマン」の見せ場を飾ってきた。そのなかでバットスーツと並ぶツートップというべき存在がバットモービルだ。バットマンの足であると同時に最強の兵器でもある“頼れる相棒”は、歴代映画シリーズでも最も個性を発揮してきた装備。優雅な曲線を描くレトロなルックにギミックを詰め込んだティム・バートン版、スーパーカーと装甲車をミックスしたミリタリー色の強いクリストファー・ノーラン版は、デザインや機能を含めそれぞれの映画におけるバットマンのキャラクターを象徴する存在として生み出されていた。

『THE BATMAN -ザ・バットマンー』に登場するバットモービルは、まるで公道レーサーが乗るようなマッスルカーを思わせるデザイン。歴代バットモービルの中でもっとも“普通の車”に近いシェイプだが、それは“大人しい”とイコールではない。極太タイヤに高めの車高、激しい排気音はまるで野獣の咆哮のよう。ペンギンの乗ったマセラティと激しいチェイスを繰り広げ、容赦なく車体をぶつける様は『マッドマックス』を思わせる荒々しさだ。変形などギミックがない分、スピードとパワーだけで押しまくる潔さも気持ちいい。リーヴス監督によると、そのコンセプトは「悪党を恐怖させるバットスーツのような威圧感を持つ、モンスター的な存在」。両親の仇を討つため容赦なく犯罪者をねじふせる今作のバットマンそのものだ。

 

バットマンとして活動をはじめて2年目のブルース・ウェインは、誰にも頼らずひとり黙々と自警活動を続けている。バットモービルも地下のガレージにこもったブルースが自ら作り上げたという設定だ。その車体についてプロダクション・デザイナーのジェームズ・チンランドは「マッスルカーをベースに、フレームやエンジンをカスタムし装甲などを追加していくという発想」だと語っている。翼のようなフォルムを持つリアデザインはリーブ監督が大好きだというテレビシリーズ『バットマン』(66-68)のビークルを意識したもので、爆音を上げながら火を放つ巨大なリアエンジンもテレビ版を思わせる。

 

バットモービルにベースになった車両はなく、車体はフルカスタム。基本デザインには『ゴースト・イン・ザ・シェル』(17)『トータル・リコール』(12)のデザインワークを手がけたアッシュ・ソープや、『デッドプール2』(18)『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(19)のコンセプトアートを担当したベンジャミン・ラストらが参加。デザイン画をリアルな車両に落とし込んだのは『ブラックパンサー』(18)『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(21)の車両を手がけたビークル・ディレクターのジョセフ・ヒウラと錚々たる顔ぶれが集結した。

撮影のために制作された車体は4台。うち1台はセリフ録音の妨げにならないようEV車としてつくられた。また今作の体感的なカーアクションは、CGではなくスタントドライバーによる実車で撮影。炎の中を突き抜けるなど派手な見せ場のため、1台はサスペンションが長いジャンプ仕様で作られた。

 

「私たちのバットマンはまだ始まったばかり。だからバットモービルも原始的な匂いを感じる車にしたかった」と語ったリーブ監督。今後シリーズを重ねる中で、バットモービルがどんな進化を遂げていくのかにも注目したい。

 

 

CAST

ロバート・パティンソン、コリン・ファレル、ポール・ダノ、ゾーイ・クラヴィッツ、ジョン・タトゥーロ、アンディ・サーキス、ジェフリー・ライトほか