【スカルプターズ GARDEN】美男子を語る 第1夜・「カフカ」/MICHIRUimai
美しいもの&かわいいものが好きなラボメンバーに贈る【スカルプターズ GARDEN】始動!
毎月、注目の女性原型師に美男子造形について語ってもらう連載「美男子を語る」。記念すべき第1回はMICHIRUimaiさん!
優美な女性、あどけない少女……数々の美しい造形が注目を集める原型師、MICHIRUimaiさん。今度の新作は、なんと13歳の“美少年”。
今回はそのインタビューの模様を制作過程の写真とともにお届けする。
カフカ/MICHIRUimai
Original sculpture, 2021
まだ中性的なあどけない造形がたまらない。
『SCULPTORS04』に掲載の原型。撮影:小松陽祐
——“美少年”カフカについて。
今回制作した「カフカ」は“優しげで悪戯な表情”を意識して制作しました。劇的で叙情的であったりという作品も好きですが今回はシンプルに。あたかも小説の表紙になりそうな、というところを少しだけ意識してデザイン的な表現にしています。
彩色中の頭部。瞳の虹彩までに描かれている。
——何故“美少年”に惹かれるのでしょうか。
私がこれぞ“美少年”という存在に出会ったのは高校生の時に読んだ萩尾望都 先生の『ポーの一族』の登場人物である少年のまま吸血鬼となってしまったエドガーとアラン。少年の姿と心を持ちながら永遠を生きることの矛盾と過酷さが描かれています。
思春期の心の揺らぎ
私の場合“美少年”という括りに入るのは子供から大人に心も体も大きく変化していく年頃なのだと思います。
“美少年”というファンタジー——美しい様相とそれに似付かわしくない無邪気な残酷さと多くの未知なものへの好奇心と恐怖心を同時に持つことが存在をぐらつかせ、儚い存在と感じさせるのではないでしょうか。
何故美少年に惹かれるのか
それは 社会で生きていくためには少年の心を殺して大人にならなければならない
そうでないとエドガーとアランの様に社会で孤立してしまう存在となってしまうから
我々はそんな貴重な美少年という儚い存在に憧れ、消えないで欲しいと願うからなのではないでしょうか。
——“美少年“のしぐさについて。
作品のヒントになった「カフカ(代表作『変身』)」にも登場する“甲虫”に視線が自然に誘導されるような動きにしています。“甲虫”を指す手と少年カフカの視線の意味はご想像にお任せいたします。
きらめく甲虫と柔らかな指先の対比が見事。
——“美少年“な手とは?
手を作るのはとても苦手、というか面倒くさい……。
一見造形とは無関係そうな話ですが昔中学校の体育で創作ダンスの授業があり、その時に先生がやたらと「手先の動きに注意して!」 「手の表情で全部が変わる!」などと言っていて、その時私は実際に踊りを見て「その通りだなー」と思った事を造形をやっているとき今でも時々思い出します。
手や足先など末端の動きはとても大事で特に手の表情は感情を語るものだと思うので、自分でいろいろなポーズをとってみて参考にしながら意識的に造形しています。「年齢は手に出る」とも言いますしね……手は重要……。
組み立て前のガレージキット。裏側から見ても美しい手が確認できる。
——“美少年“の服飾について。
服装でその人物の文化的背景が分かる。造形物の場合は着せ替えができないので一つの服装でその人物の文化的背景を語ってしまい、とても重要で難しいところだと思います。
今回の作品「カフカ」は季節は春、19世紀末頃の上流階級の家庭でのびのびと大切に育てられている少年というイメージで作りたかったのでのびのびと服の装飾をこだわって造形することができました。
しかし、逆に言えば文化的背景を描きたくない場合(表現したいメインが感情の場合)は服装は邪魔で、裸である方が良かったりするので、ここはいつも悩むところではあります。
造形途中の繊細な襟元。
丁寧な墨入れで細かな造形を際立たせていく。
——MICHIRUimai理想の男体造形とは?
男性を造形するときは特にギリシャやバロック彫刻などを意識しています。
その中でも造形をはじめてようやくですがジャン・ロレンツォ・ベルニーニの彫刻を見るようになりその躍動感に溢れ、かつ自然な身体や布の動き、細かな装飾などに彼の持つフェチズムを感じて心惹かれました。一昨年11月にイタリアに行った時、実物を見ることができてとても感動ました。またいつかイタリア中のベルニーニの彫刻を見に行けたら良いなと思います。
MICHIRUimaiさんのこだわりが詰まった“美少年”カフカはhttps://artfiguegk.booth.pm/で販売中!
Profile
いまい・みちる
フリーの造形作家/モデルスカルプター。東京の美大では油彩画を学んだが、卒業後に立体造形に興味を持ち、制作を始めた。商業原型なども手掛けたが、2012年からワンダーフェスティバルに出展し創作作品を発表している。
Twitter:@michiru_imai