【キャラクター&衣装編】アイドリッシュセブン「BLACK or WHITE LIVE SHOWDOWN 2022」制作裏側メイキングインタビュー!

2022年8月20日に7周年を迎え、たくさんのファンに愛され続けているスマートフォン向けアプリゲーム『アイドリッシュセブン』。

大晦日に行われた音楽番組「BLACK or WHITE LIVE SHOWDOWN 2022」では、 IDOLiSH7・TRIGGER・Re:vale・ŹOOĻが新曲を初披露し大いに盛り上がりました。

本記事では、【制作編】【キャラクター&衣装編】に分けてライブの制作裏側を公開!制作を担当したバンダイナムコオンラインの下岡聡吉さん、制作全般を担当したダンデライオンアニメーションスタジオのプロデューサー中山佳代さん、演出担当の西田映美子さん、ソリッド・キューブ原田奈美さん4人にお話しを伺いました!

INTERVIEW

——1キャラの制作時間を教えてください。

DLAS西田:1体につき1ヵ月~1ヵ月半程度ではありますが、『RabbiTube』のモデルをリファインしている分、もう少し抑えられているキャラもいます。常時3名プラス、スポットでヘルプに入るスタッフが数名といった体制ですので、ひとりあたり何キャラというのは数えにくいです。「ŹOOĻ」の衣装にドラゴンなど複雑な模様が描かれていたりしますが、このような衣装テクスチャに関しては、キャラ原案の種村有菜先生に描いていただいていることもあります。

亥清 悠 衣装

——衣装の3Dモデル制作の際に特に注意した点を教えてください

DLAS西田:3Dですので、動くとウェイトの影響でせっかくの衣装の模様なども伸びて見えることがあります。モデリングやリギングでも細心の注意で制作はされていますが、それでも伸びてしまうような場合はアニメーターがつけられた3Dアニメーションに対して、モデルのvertexを直接いじって調整することで極力上記が発生しないようにしております。また、今回大変衣装が複雑ですので、アニメーション時に衣装がボディにめりこむというような事象が発生することはデザインの段階で見えていましたので、いただいたデザインに対して、3D的に整合性を少しでもとれるように、モデリングでこまごまとデザインの調整をかけております。そういう意味で、もっとも衣装が複雑なのは、可動のある腰や肩回りに、たくさんディティールがついている「IDOLiSH7」です。たとえば足の可動はどのような動きを想定したところでX回転がもっとも大きいわけですが、その回転軸を遮るようなものは極力サイズや位置をずらしたりします。そういうことを、デザインから読み取って3Dモデルに落とし込んでおります。

二階堂大和 3Dモデル

——作画監督からの表情の修正指示に合わせてモデルをベースから修正するという、1人1人こだわって制作されているところにとても愛が感じられたのですが、各キャラの表情でこだわった部分を教えてください。

DLAS西田:3Dのモデルは基本的に正面がもっとも似ている状態で作成しておりますので、アングルや表情によってはどれだけ精度の高いモデルであっても、似なくなってしまう瞬間が必ずあります。すべて3D班のほうで表情付けは行っていますが、その表情のまま作監修正をいれることでブラッシュアップがかなうという仕組みになります。表情だけではなく、ボディにも修正指示は入れていただいており、頭から体まで修正をいれることでクオリティは格段に上がります。なのでとりわけ寄りのカット、というのは、どのカットにおいても制作者の情熱が特段にこめられています。アニメーターにとってこのキャラに思い入れがある、という気持ちもブラッシュアップレベルがあがるファクターになると思います。また楽曲内で、楽曲に対するキャラ性を演出的に追加することで、特別性や方向性を出しております。人数が多いので絞りますが、

一織:高い空に憧れる夢見る青年
天:独善的で我儘な彼氏
千:無償の愛を惜しみなくすべてに与える存在
巳波:傾国の美女。儚く美しいだけではなく強い毒がある

といったかんじです。

作画監督修正指示(和泉一織)

作画監督修正指示(棗 巳波)

——千のポニーテールのなびかせ方でこだわった部分がありましたら教えてください。

DLAS西田:千は毛量が豊かなキャラですが、ポニーテール自体は数本の毛束ポリゴンで構成されています。それぞれが別で運動するとまとまりがなくなりますので、一本の軸となる動きがあり、それに対して必要に応じて、ほかの毛束で適宜ニュアンスを加味するという方法でやっています。現実的なポニーテールもそのような動きをしますので、それが一番気持ちの良い動きなのかなと個人的には思っております。

——百と千のマントの透明感がリアルに表現されていますが、どのような点に注意して制作されたましたか?

DLAS西田:天の羽衣のような実体のないものというよりは、実体や質量があるものとして表現しています。折り重なって二重に見えると透明度が下がったり、マント越しで見えるキャラは明度が落ちるなど、コンポジットのほうで細かく見てもらっていました。動きは基本的にフルシミュレーションですが、常に空気をはらんで見えるようにうまく調整してもらっています。

——ステージから観客に楽譜が流れているような場面がありますが。

DLAS西田:楽譜は、これまでの「Re:vale」の楽曲を何点か並べたものになります。最初は明確な楽譜というより音楽的な記号の羅列だったのですが、BNOさんより隠し要素的にこれまでの楽曲にしてはどうかという提案をいただいてメロディ譜をいただき、その形で進めました。

——「Re:vale」の最後に百が首を曲げていますが、このシーンを取り入れようと思った理由はありますか?

DLAS西田:なんででしたっけ…。アニメーション制作中に加味されていったような記憶がします。Re:valeに関しては「仲がいい」ということがまず軸になっているので、最後でスンとするより、最後まで仲いいよ!というのを通したかったんだと思います。

——陸と天の右手を差し伸べるシーンが似ていると思うのですが、意図的なものがあったのでしょうか?

DLAS西田:ポーズの共通自体は特に意図はしたものではありませんが、陸と天の差は、今回の「ブラホワ」だと光と影というような差は出るように構成しています。兄弟だから、ということより、「ブラホワ」に対してのユニットとしての“強い執念”が各々あるということを込めるようにはしました。

——一番の見どころであるアップの楽・天・龍之介のシーンで注意した部分はありますか?また、完成したポージング以外にも構図案はあったのでしょうか?

DLAS西田:構図案はありませんが、まず楽は柱にもたれてセクシーなアピールをしてほしいというのを振付師さんに相談しておりまして、それがMV完成版にある通りほんとに強かったので、天と龍も同レベルの強さに見えるように振付リハでお願いしたというところです。最終的に天は我儘セクシーですし、龍はあんなにガタイがいいのに、ギャップで弱さを見せたアピールをする、ということが振付段階で出来上がった感じです。

——環と壮五がアイコンタクトをするシーンなどキャラクター同士の絡みはいつから考えているのでしょうか?

DLAS西田:キャラを理解されている振付師さんのご提案になります。MEZZO”が「ブラホワ」の前にどういうシナリオ展開があるのかというのは、もう少しあとでBNOさんから聞いたため、それに合うように絵コンテ側で調整しています。環がわりと年相応な少年らしい表情にふっているのは、MEZZO”を踏まえたためです。

四葉環と逢坂壮五アイコンタクト 絵コンテ

——各ユニットの苦戦した部分や印象に残っているシーンを教えてください。

【ŹOOĻ】
DLAS西田:物語性を入れたためそれをステージングに反映したことです。背景モデルが複雑で、床面モニターに入れる内容や、色遣いなどはかなりこだわってもらっています。未来的な面を持ち合わせているため、そこにサイバーな部分を融合して、最終的にはうまくまとまったのではないかと思います。「ŹOOĻ」を一番最初にMV制作したのですが、モデルもアニメーションも背景ルックもわりと最初から精度が高い状態で制作が進んでいて、クライアントからも評価が高かったので、そのあとのほかのMV制作の弾みになったかと思います。

【Re:vale】     
DLAS西田:穏やかに見守る千と、見守られながらのびやかに振舞う百の関係性がわかる表情や振る舞いです。最初絵コンテを描いているときは、こういう千はありかナシかというぐらいの気持ちだったんですが、それが逆に強い意志みたいなものに変換されたと思います。彼ら自身の輝きを盛るために、宝石や印象の輝きにはこだわってもらっています。「TRIGGER」もですが、特徴的な宝石が顔周りにあると、宝石のきらめきは意外とキャラを食ってしまいがちです。本来アクセサリーは持ち主を輝かせるためのものですから、キャラ以上に宝石に目を奪われる絵作りはNGにしていまして、寄りカットでは特にそういうことはこまごまと気を使ってもらっていました。

【TRIGGER】
DLAS西田:ライブというより、PVに近い構成になっています。ラブストーリーということもあり、彼らが言い迫ってくるように見せるため寄りを多用しているので、とにかく画面の向こうの視聴者に訴えるための表情全般で大変だったと思います。寄りが多いと、すべての工数が上がりますのでこだわりと時間はかかっています。表情を重視するため、キャプチャーのモーションを手付けで抑え込んだり、無理やりカメラに合わせたり、全体的なタスクが非常に高かったと思います。ライティングの調整や顔のレタッチなども総じて多かったです。

【IDOLiSH7】
DLAS西田:3Dなので、単純に人数が多いとそれだけでデータが重いという点で大変です。衣装もだいぶ複雑でして、どう揺らすか、どう逃げるか、この回避はどうするか、みたいなことを、キャラデザから最終納品までひたらすらやっていた気がします。背景に関しても、無数の球を使用した演出ゆえに煩雑になるところを、システム的にやってくれていたようで、関わる全員がわりと常にいつも何かと問題と立ち向かっていたような気がします。

——5月には「アイナナEXPO」や「劇場版 アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD」が開催されますが、楽しみにされているファンの皆さまに一言お願いいたします!

BNO下岡:7周年というアイドリッシュセブンにとって大事な1ページを丁寧に紡いでまいりました。7周年という大きな祭りを1年間を通して大きな熱量でここまでこれたのは、製作スタッフ一人一人が手をつないで協力し合い、マネージャーの皆様に楽しんでいただいくという相互作用が響きあった結果だと思っています。私たちは皆様がいてこそ存在できているということをいつも実感しています。
与えていただいた愛情に答えたいと走り続けた結果が7周年であり、7周年記念イベント内でのアイドル達のライブや、BLACK or WHITEの披露といったような素晴らしい着地となりました。いよいよ7周年期の大詰めとなる「アイナナEXPO」や「劇場版 アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD」がやってきます。楽しい思い出を作っていただける場にしていきたいと思っていますので是非来場していただけますと嬉しいです。

 

©︎アイドリッシュセブン

 

 

 

Profile

株式会社バンダイナムコオンライン チーフクリエイティブオフィサー
下岡 聡吉
アイドリッシュセブンプロジェクトでは、エグゼクティブプロデューサーとしてIP創出・拡大の企画を担当しています。

 

ダンデライオンアニメーションスタジオ プロデューサー 
中山
佳代
前職はCGアニメーター。ダンデライオンではCGプロデューサーとして「龍の歯医者」「Readyyy!プロジェクト」「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」等に関わってきました。アイドリッシュセブンプロジェクトでは『RabbiTube クリエイター』にチャレンジ!!からお手伝いしております。

 

ダンデライオンアニメーションスタジオ  
西田 映美子
演出・3DCGディレクター。
「ツキウタ」、「B-project」、「Readyyy!プロジェクト」、「劇場版テニスの王子様」、「あんさんぶるスターズ!!」など多くのMV演出を担当している

 

株式会社ソリッド・キューブ
原田 奈美
ソリッド・キューブ在籍時はアイドリッシュセブンプロジェクトではMUSIC VIDEO ANIMATION『RESTART POiNTER』から参加し、『RabbiTubeクリエイター』にチャレンジ!!ほか、モーションにおける、振付、演技のディレクションを担当。現在は株式会社プライマリーフィールドの代表を務める。