【スカルプターズ・データベース】僕たち造形師は「立体コピー屋」ではない。立体の見せ方、デザイン、アレンジは我々が1番よく知っている——造形作家 榎木ともひで

フィギュア、ゲーム、CM、映画、そしてアートのジャンルで最も造形力のあるスカルプター・原型師を集めた、最新データベース創刊!

驚異の創造力とアイディアの奇才
榎木ともひで Profile


榎木ともひでとその利き手

えのき・ともひで

1974年生まれ。美少女からバイオレンス系、リボルテック「ダンボー」など、あらゆるジャンルをこなすオールラウンダーな造形作家。eyewater主宰。漫画家志望から造形へと転向した経歴を活かし、キャラクターを徹底解析して「アニメ絵」特有の歪みから作風の魅力、癖に至るまで立体物に再構築する唯一無二の技術を持つ。キャラクターデザイン的なデフォルメや、空間構成力を駆使したヴィネットも得意技。近作は「SNOOPYMUSEUM TOKYO ピーナッツヴィネットコレクション Vol.2」「アヤナミレイ(仮称)第3村Ver. 」など。今年、造形師デビュー25周年を迎えTwitterなどで「#造形師デビュー25周年」でまとめた25年分(1998~2023年)の造形作品が全て見れるようになっている。オリジナル作品はWebショップなどで購入可能。eyewater-enoki

Twitter:@eyewater_e

最新作

オリジナル作品『二次元的骨格標本少女 富井アンナ』(レジン版)
いわゆるアニメ顔の内部骨格(頭蓋骨など)を立体的に再現しています。外装(スキン、髪の毛)などが取り外し可能。色ごとに分割し、3D出力をパーツごとにカラーでおこなうことより、塗装不要で組み立てるだけでフルカラーの完成品になります。また、白一色のレジンキット版もあり。設定色ごとに分割されているのでマスキングいらず。

作品

オリジナル作品「キョダイ パグミミ少女ゼロ」

オリジナル作品「ちゃコーる」

オリジナル作品「パグトロン」

オリジナル作品『パグミミ少女』

2022年で一番変化したこと

2022年は環境、モチベーションにおいて造形人生で最悪。
廃業さえ考えるほど。
逆にこれを転機に前向きに活かしていこうと思っています。

2022年で一番感動した作品

ドラマ『霊媒探偵・城塚翡翠』、M・ナイト・シャマラン監督の映画『ヴィレッジ』。『ヴィレッジ』は2004年の映画ですが2022年に初めて見て驚愕。なんで今まで見ていなかったんだろうと後悔。

2022年でこれは使える!と思ったモノ

UVレジンにレジン着色剤で色をつけることです。

 オリジナル作品の場合のワークフロー

時間の空いた時期をみて(強引に時間を作ったり)イメージしていたものをまずはデザイン画にします。
ここで立体的なイメージもかため、それをもとに造形作業に入ります。
基本的にガレージキットを想定しているので塗装しやすく分割します。
オリジナルの場合、出力も自分でおこないます。
作業は仕事の合間合間になり、2ヵ月から半年?くらいかけて完成にもっていきます。

 お仕事の場合のワークフロー

① まずは作るべきものを担当と打ち合わせ。
② そのIPを使ってできること、やるべきことと表現方法を決める。
③ デザイン画を作成(何度も検討を重ね、何週間もかかることがある)。
④ 造形作業に入る(デジタル造形)。
⑤ 仮出力で確認、修正。
⑥ デジタルで分割。
⑦ 出力。
という流れです。
 
デフォルメなどのものは1週間〜2週間。
ヴィネット的なものは1ヵ月〜2ヵ月。
デザイン画に時間をかけることも多いです。
※上記は作業時間の合計的なもので、実際には合間に別の作業が入る。
 

 

INTERVIEW

——小さい頃なりたかったものは?

漫画家です。
近年になってやっとAmazonでも買える「ホビロビ」という漫画を1冊出すことができました。

——最初に造形したのはいつですか?

小学6年生の時の粘土細工。
初めてレジン複製した造形は、1998年に制作したオリジナルキャラ『山口プラム』。


小学6年生時の作品


オリジナル作品『山口プラム』

——出身校と、学生時代にはまっていたものを教えてください。

大阪美術専門学校 デザイン学科イラスト専攻。
にもかかわらず造形がブームで卒業制作も立体物。
イラストそっちのけで造形にはまっていました。

——いつ頃から原型師を目指しましたか?

原型師を目指した覚えはなく、紹介されるままバイト感覚で始めて今に至る。

1998年に初めて本格的に作ったものがそのまま商業原型デビューになりました。
『カードキャプターさくら』のケロちゃんです。
同時に制作していたオリジルキャラ『山口プラム』がワンフェスデビューに。

——使っている粘土、レジンの種類、塗料の種類、愛用のツールなど

粘土はグレイスカルピー。

【ソフト】ZBrush 
【3Dプリンタ】ELEGOO Mars 2 Pro、ELEGOO のレジン
【塗装】Mr.カラー、ガイアカラー、タミヤカラー エナメル

——落ち込んだ時に見る映像は?

『銀河英雄伝説』。
ヤン・ウェンリーに会いたくなる。

——造形するとき一番こだわられていることは?

造形的に面白いこと。
つまらないものは作りたくない。
実際に造形するの前の「発想、デザイン画」でほとんど出来は決まってしまう。

——現在、メインでお仕事されているジャンルは?

ヴィネットデザイン、ヴィネット制作。
スケールもの、オリジナルキャラクターもの。

——今後の野望を教えてください。

野望というか希望なのですが、
僕たち造形師は「立体コピー屋」ではない。
立体の見せ方、立体デザイン、立体アレンジは我々が1番よく知っている。
その専門家であることを周知させたいです。

Data

コレクション棚

最近はまっているもの

一周回って粘土造形です。
仕事は全てデジタルにしてしまったので逆に粘土が面白いです。

影響を受けた(大好きな)映画・漫画・アニメ

『ルパン三世 カリオストロの城』
『風の谷のナウシカ』(映画も漫画も)
『天空の城ラピュタ』
『未来少年コナン』
『アイアンマン』
『まんが道』(ドラマも漫画も)
『銀河英雄伝説』
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』

1日に造形する平均作業時間

10時間くらい。

使っているパソコン、ペンタブ

【パソコン】iMac
【液タブ】Wacom Cintiq

おすすめの椅子

教えて欲しいです(笑)。