【スカルプターズ・データベース】イリス・ヴァン・ヘルペン回顧展で観客を魅了!美しき曲線の先に見えるファンタジーの世界観 石野平四郎

フィギュア、ゲーム、CM、映画、そしてアートのジャンルで最も造形力のあるスカルプター・原型師を集めた、最新データベース創刊!

 

作品の雰囲気を捉えることで、直接的な感動につなげる
石野平四郎 Profile

昔、絵を描いていた時期にある先生から恐らく冗談で、美しくない、芸術家の手じゃないねって言われたことが結構ショックで、それ以来自分の手がずっとコンプレックスでした。でも、ジブリのナウシカで『姫様は働き者の手と言ってくださった』というおじいさんのセリフが好きでそれに救われて今でも作品たくさん作ってます。なので手の写真はないですがこの話を一つ(笑)。

石野平四郎 Heishiro Ishino

1992年神戸生まれ。2015年神戸芸術工科大学クラフト・美術学科フィギュア・ 彫刻コース卒業、2017年新芸術校標準コース卒業 、SICF14 準グランプリ、第 20 回岡本太郎現代芸術 賞展入選。造形作家集団 GOLEM のキュレーター。メインカルチャーとサブカルチャーを越境し、批評的立ち位置を表明することで新たなジャンルの創設と芸術様式の細分化を目指している。作家としては神話や伝承上・想像上の生き物を モチーフに粘土素材で造形した作品を制作している。主な個展として「O-M-O-T-E」(Roentgenwerke/ 東京,2015)、主な企画展として「GOLEM」 (3331 Arts Chiyoda/東京,2022)などがある。
 
 

最新作

Title: “Yomotsuōkami”
Japanese Title: 『黄泉津大神』
Sculptor: Heishiro Ishino
Series: ∞ millions
Work: 2023
Size: H153.5cm x W78cm x D70cm
Weight: 45.7kg
Material: Iron, Stone powder clay,  Lacquer,  Resin, Acrylic paint
Photo by Daiki Tsutamoto
 
八百万の神々を制作した「∞ millions」というシリーズで、日本神話の多種多様な自然現象に神が宿るという考え方(特に死体から神様として湧き生まれる者たちの話)を自身の制作過程で出た失敗作を解体して次の作品の素体とすることで、神性を見出し新たな生命として顕現させています。
 
このYomotsuōkami(日本語表記だと『黄泉津大神』)は火の神であるカグツチを産んだことで焼け死んでしまったイザナミの死後、冥界で別の神になった姿で日本神話に登場する生と死の円環を司る女神または死神です。
 

これは「Iris van Herpen : Sculpting the Senses」展に合わせて制作したものですが、モチーフ選びの際に「∞ millions」シリーズでは私(彫刻家)が中心となり嵐のように作ることも(日本神話の神産みの文脈を自分を取り巻く時代や場所の解像度に合わせ咀嚼し混ぜながらリサイクルすること)コンセプトに含まれているということもあり、別の国で彫刻を発表することを死後に別の世界で黄泉津大神となった地母神の表現として組み込み、衣のような流れと蛆や菌が骨と同化した植物のような造形を施すことで、生と死を同時に感じられるような形とグラフィックノベル感のある時代性を孕んだデザインを意識しています。

 

 

代表作

Title: “Wakaikazuchinokami《 worm 》”
Japanese Title:「若雷神 《 worm 》」
Sculptor: Heishiro Ishino
Series: ∞ millions
Work: 2024
Size: H48cm x W33cm x D25cm
Material: Iron, Stone powder clay,  Lacquer,  Resin, Acrylic paint
Photo by Daiki Tsutamoto
 

Title: “Naruikazuchinokami《 worm 》”
Japanese Title:「鳴雷神 《 worm 》」
Sculptor: Heishiro Ishino
Series: ∞ millions
Work: 2024
Size: H88cm x W30cm x D26cm
Material: Iron, Stone powder clay,  Lacquer,  Resin, Acrylic paint
Photo by Daiki Tsutamoto
 
Title: “Yomotsuōkami”
Japanese Title:「黄泉津大神」
Sculptor: Heishiro Ishino
Series: ∞ millions
Work: 2023
Size: H153.5cm x W78cm x D70cm
Material: Iron, Stone powder clay,  Lacquer,  Resin, Acrylic paint
Photo by Daiki Tsutamoto
 
Title: “Mikahayahinokami”
Japanese Title:「甕速日神」
Series: ∞ millions
Sculptor: Heishiro Ishino
Work: 2023
Size: H50cm x W25cm x D27cm
Material: Iron, Stone powder clay,  Lacquer,  Resin, Acrylic paint
Photo by Daiki Tsutamoto
 
 
Title: “Iwasakunokami・Nesakunokami”
Japanese Title:「石析神・根析神《 larva 》」
Sculptor: Heishiro Ishino
Series: ∞ millions
Work: 2023
Size: H136cm x W90cm x D77cm
Material: Iron, Stone powder clay,  Lacquer,  Resin, Acrylic paint
Photo by Daiki Tsutamoto
 
Title: “Icarus”
Sculptor: Heishiro Ishino
Work: 2022
Size: H240cm x W260cm x D330cm
Material: Iron, Stone powder clay,  Lacquer,  Resin, Acrylic paint
 
Title: “The White Rabbit of Inaba”
Japanese Title:「稻羽之素菟」
Series: messenger
Sculptor: Heishiro Ishino
Work: 2022
Size: H43cm x W28cm x D25cm
Material: Iron, Stone powder clay,  Lacquer,  Resin, Acrylic paint
 
Title: “Ω”
Series: A tribute to Lovecraft’s
Sculptor: Heishiro Ishino
Work: 2022
Size: H30cm x W26cm x D23cm
Material: Iron, Stone powder clay, Ruby loose, Lacquer,  Resin, Acrylic paint
 
Title: “Architeuthis”
Japanese Title:「龍涎石」
Sculptor: Heishiro Ishino
Work: 2022
Size: H77cm x W53cm x D33cm
Material: Iron, Stone powder clay,  Lacquer,  Resin, Acrylic paint
 
Title: “Emerald open heart”
Series: stardust
Sculptor: Heishiro Ishino
Work: 2021
Size: H43cm x W28cm x D25cm
Material: Iron, Stone powder clay, emerald rough stone, Lacquer,  Resin, Acrylic paint
 
Title: “Amenokakunokami”
Japanese Title:「天迦久神」
Series: messenger
Sculptor: Heishiro Ishino
Work: 2021
Size: H78cm x W79cm x D48cm
Material: Iron, Stone powder clay,  Lacquer,  Resin, Acrylic paint
 
Title: “Sirius”
Japanese Title:「伴星の大犬」
Series: astral body
Sculptor: Heishiro Ishino
Work: 2019
Size: H 51cm x W50cm x D27cm
Material: Iron, Stone powder clay,  Lacquer,  Resin, Acrylic paint
Photo by Daiki Tsutamoto
 
Title: “Yata no Kagami”
Japanese Title:「八咫鏡」
Series: wandering regalia
Sculptor: Heishiro Ishino
Work: 2017
Size: H63cm x W24cm x D25cm
Material: Iron, Stone powder clay,  Lacquer,  Resin, Acrylic paint
 
Title: “Red dragon”
Sculptor: Heishiro Ishino
Work: 2015
Size: H200cm x W100cm x D40cm
Material: Iron, Stone powder clay,  Lacquer,  Resin, Acrylic paint
 
Title: “RYU-KO”
Japanese Title:「龍蠱」
Sculptor: Heishiro Ishino
Work: 2014
Size: H230cm x W110cm x D120cm
Material: Iron, Stone powder clay,  Lacquer,  Resin, Acrylic paint
 
Title: “Shigiyamatsuminokami & Hayamatsuminokami” 
Japanese Title: 「志芸山津見神と羽山津見神」
Series: ∞ millions
Sculptor: Heishiro Ishino
Work: 2020
Size: H430cm x W270cm x D250cm
Material: Iron, Stone powder clay, Resin
 

お仕事の場合のワークフロー

主に石粉粘土による造形なので、乾燥させている間に別の作品なども並行して作っていますが、今だと小さい作品でも1ヶ月は掛かってますね。昔はもっと早かったんですが、造形が細かくなったり技術が上がった分時間が掛かるようになった感じです。大きい物では半年以上かかっているものもたくさんあります。納得いくまでがとても長いですね。納期がある場合は制作にかけられる期間が決まっていますので、一つにかける時間やモチベーションもだいぶ違うということもあります。

2023年で一番変化したこと(作品づくりにおいての環境、姿勢、モチベーションなど)

やはりイリス・ヴァン・ヘルペンから展示の依頼がきたことが大きいですね。作品が世界的なアーティストに認めてもらえてるという自信と海外の美術館で大作を展示という、私にとってとてつもないキャリアアップを得ることができました。この「Iris van Herpen : Sculpting the Senses」というイリスさんの大回顧展ですがパリの装飾美術館での展示(〜2024年4月28日)では40万人以上ものお客様が来場されたそうです。この展示は6月にブリスベンのGoMA近代美術館へと巡回し、後に2025年まで世界各国を巡回していきます。

2023年で一番よかった資料

たくさんありますが、特に良かったなと思ったのはナショナル ジオグラフィックの「地獄遊覧」と加須屋誠の「六道絵巻」ですね。

2023年で一番感動した映画

その年に初めて見たんですが「ザ・メニュー」がとてもよかったです。

2023年で取り入れてこれは使える!と思った道具、塗料の種類など

最近未塗装かほんのり白を塗るだけの仕上げ方に目覚めたので、むしろ塗料に関しては減りました。最初は未完成的な印象のせいでなかなか踏み込めませんでしたが、イリスさんに称賛いただいたことをきっかけにそのスタイルもアリだなと感じることができました。単純に造形を魅せやすいという理由もありますが、神性さや霊的なものを表現するのに最も適していることに気がつきました。
 

INTERVIEW

——小さい頃なりたかったものは?

小さい頃は映画監督や探検家や学者になりたかったような気がします。

——本格的に造形した最初の作品を教えてください。

本格的に制作開始したのは高校生の頃で、大学2年のときにそれまでの作品をまとめた最初の個展をしました。画像の作品は確か「人魚の森」ってタイトルだった気がします。もうだいぶ古い写真しかないので画質が粗いですが、この作品は今でも実家に綺麗な状態でしまってあります。また機会があれば出して撮りたいですね。
 
「人魚の森」

——使っている道具、木材、塗料の種類など

粘土はニューファンド(石粉粘土)スパチュラはなんでも使いますが基本指で造形してます。

——落ち込んだときに聞く音楽、もしくは見る映像は?

Saosinの「The Alarming Sound of a Still Small Voice」です。高校時代からずっとこの曲に何度も救われています。

——造形する時一番こだわられていることは?

何よりも雰囲気を捉えることです。それは直接的な感動につながります。

——現在、メインでお仕事されているジャンルは?

一応、美術家・彫刻家という肩書きなので作品のシリーズ、そのメインストリーム的な意味合いで言えば「∞ millions」という日本神話をモチーフに制作したシリーズです。もう一つのメイン、キュレーターとしての仕事は「GOLEM」があります。

——今後の野望を教えてください。

まず、僕自身のキャリアとして代表的な大きな個展をやるということと「GOLEM」をPh5(最終段階の美術館展示)まで続けるということですね。
 

 

Data

作業スペース

主に小さい作品はここで製作しています。

作品棚

以前造形のトレーニングとして製作したNSP造形の一部などを飾っている棚です。中にはGOLEMメンバーが制作したものもあります。

最近はまっているもの

肉食恐竜のフィギュア集めてます(笑)。

影響を受けた(大好きな)映画・漫画・アニメ

たくさんあるのですが、何かあげるとすれば『アカルイミライ』『パルプ・フィクション』『ソナチネ』『乱』『キングダム』この辺りはライフスタイルにかなり影響を受けています。仕事に対する姿勢や流儀も。

1日の平均作業時間

日によってまちまちです。