【第4回】大畠雅人のZBrushでリアル系フィギュア造形入門 〜ZBrushのDynamicsとMarvelous Designerで衣服作り〜

大畠雅人氏の作品「Breaking Free」。本作のメイキング&解説を5回にわたり紹介!【第3回】はZBrushを使用して全体構図が完成。【第4回】は大畠さん流の衣服の作り方を伝授。

※本記事は『STRING 大畠雅人アートワークス・造形テクニック』に収録されているメイキングページを抜粋して掲載しています。

 

 

 

 

 

衣服を作る

シャツの作り方はさまざまなアプローチがあると思います。

【その1】写真資料を集めて観察しながら彫刻する

これが一番純粋で、シンプルな作り方。一番近道だったりします。

【その2】ZBrushのDynamicsを使用する

布のシミュレーションができるツールです。

1. Tシャツ部分をマスク。

2. Extractで別パーツ化したら、ZRemeserでローポリに。

3. Dynamicsで布感を出していきます。

①CollisionVokumをON

②Inflateを少ない数に(大きいと服と体に隙間ができます)

③ExpandをONにして右のスライダーの数を0.07くらいに

④GravityをONにGravity Strengthを0.04程度に

⑤Run Simulationをクリック

 

4. こんな感じになります。これをベースに造形します。

 

【その3】Marvelous Designerを使用して作る

このように型紙を作成することによって服のシワなどのシミュレーションをすることができるソフトです。

 

ちなみに……

Marvelous Designerの細かい使い方は拙著『大畠雅人作品集 ZBrush+造形テクニック』もしくは『Marvelous Designer CG衣装制作講座』(藤堂++/著)がおすすめです。

【フィギュアとして使う際のコツ】

実行ボタンをONにしたまま、アバターの「X線ジョイント表示」をONに。

 

アバターのボーンを動かして作りたいフィギュアと同じポーズにしたら、型紙部分のみ選択してエクスポートからOBJ(選択のみ)で書き出します。

【その4】実際のシャツをスキャンして使用する

実際のシャツをスキャンするという、そのままの手法。現在100万円以上するEinscan ProとiPhoneのアプリとのスキャン比較をしてみました。

 

EinScan Pro

 

 

iPhoneアプリ「STL Maker」

iPhoneの有料アプリ。顔認証でロック解除のできるiPhone、iPadなら利用できます。

 

 

 

iPhoneのアプリ意外と使えるんじゃないでしょうか…?

 

以上のような手法をいくつも組み合わせて、自分好みの造形になるまで追求してみてはいかがでしょうか?

 

 

Marvelous Designerで作る アウター編

今回、ポーズがかなり大きくついているので、アバターを動かすよりも実際のモデルに服を着せていきたいと思います。以前にMarvelousDesignerのストアで購入したシャツの型紙を使って作ります。

1. 下準備としてポリゴンを削減した軽いデータを上半身下半身、ベースの3パーツに分けました。また、1/6のサイズで作っているのでMarvelousDesignerにインポートする際に倍率を700%ほどにします。

 

 

2. インポートしたらいい感じの位置に移動させます。

3. 型紙を移動させ、モデルに沿わせていきます。

 

4. パソコンのスペックにもよりますが、粒子間隔(①)を20ほどにしておくとスムーズにシミュレーションできます。横の収縮・縦の収縮(②)を調整して好みのぶかぶか感に。生地(③)の質感や色を変更します。

 

5. シャツがいい感じになったら下半身をインポート。同じく倍率700%で大きさを合わせ、手動で位置合わせ。

 

6. 続いてベースもインポートし、手動で位置合わせ。これでMarvelousDesigner内でベースに座った状態での衣服のシミュレーションが可能になります。

 

 

Marvelous Designerで作る ゴミ袋編

1. MarvelousDesignerで長方形を出します。

2. Ctrl+C、Ctrl+Vでコピー&ペーストします。

3. 上部を残して袋状になるように「縫い合わせ」を選択。

 


4. シミュレーション実行ボタンで袋にします。

5. 穴の開いている上部に内部ポリゴン線を追加。

6. 追加した内部線のみ選択してゴム設定をOnに。強度と比率を画像のようにします。

7. すべてを選択して圧力を5に。

8. シミュレーション実行ボタンでこのようにゴミ袋が出来上がります。

 

 

分割の基本

足を例に分割の基本を解説していきます。

1. ブーリアンするほうをサブツールリストの下に、されるほうを上に配置したら、パーツの右側にあるアイコンを画像のように選択します。

2. Live BooleanをONにするとブーリアン後の状態を見ることができます。

3. BooleanからMake Boolean Meshを押して実行。Appendからサブツールを読み込むことができます。

 

4. 読み込んだサブツール。分割面は別ポリグループになっています。

5. それを生かして分割面以外にマスクをかけます(TransposeモードでCtrlを押しながら分割面を触るとできます)。

 

6. ギズモを分割面の中心に移動して伸ばします。

7. ギズモからサイズを小さく。

8. KnifeCurveで平らにカット。

9. DynaMeshをかけてスムース。

10. GroupVisibleでポリグループをまとめます。

11. オリジナルのダボIMMを追加。榊薫さんのSK IMMFitを使用しても良いかと思います。

12. 足をコピーしておき、Inflateで0.5ほど太らせてブーリアンすると、クリアランスができて組み立てやすくなります。

13. 先ほどとは逆の手順で足のほうをサブツールリストの下に置き、アイコンも逆に(赤丸部分)。これで分割できました!

14. 基本的に塗り分けしやすい箇所で分割すればよいと思いますが、シリコン複製で抜けない形は避けましょう。今回ピアスだらけの耳は塗り分けと複製で抜けない形状のため、珍しく分割しました。

 

 

 

次回、ラスト【第5回】は3Dプリンタ出力&塗装までを掲載予定!お見逃しなく!

 

 

 

Profile

大畠雅人

1985年生まれ、千葉県出身。武蔵野美術大学油画科 版画コース卒業。2013年株式会社エムアイシー入社。 デジタル原型チームに所属し、数々の商業原型を手 掛ける。2015年のワンダーフェスティバルで初の オリジナル造形「contagion girl」を発表。翌年冬 のワンダーフェスティバルで発表したオリジナル2作目の「survival01:Killer」は豆魚雷AAC(アメージングアーティストコレクション)第7弾に選出される。ワンダーフェスティバル2018上海プレステージでは日本人招待作家に選出。2022年、NHK『おかあ さんといっしょ』人形劇「ファンターネ!」のキャラクターデザインを務める。現在はフリーランス原型師として活躍中。

Xアカウント@shiyumaimai
instagram@shiyumaimai

 

 

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