【第5回】大畠雅人のZBrushでリアル系フィギュア造形入門 〜フィギュアの3Dプリンタ出力方法をわかりやすく解説!〜

大畠雅人氏の作品「Breaking Free」。本作のメイキング&解説を5回にわたり紹介!最後の【第5回】は3D出力〜塗装までを掲載!

※本記事は『STRING 大畠雅人アートワークス・造形テクニック』に収録されているメイキングページを抜粋して掲載しています。

 

 

 

 

 

 

3Dプリンタで出力

今回使う3DプリンタはPhrozen Sonic Mini 8K、使用レジンはResione M70です。

 

出力の前に…無料ソフト「CHITUBOX」でサポートを付けます。

設定

 

1. サポート付けは角度の調整が重要になります。真横から見た時に水平方向の輪切りの連続で出力されるので、モデルに水平の面がなくなるよう斜めに配置します。

2. このような設定でサポートを自動で立てます。「すべて」で自動サポートできます。

3. 上記のように立てます。サポート処理をしやすい箇所、最小限のサポート数などを出力経験を積めば見定められるようになります。

 

4. スライスを押して計算したら、保存を選択してUSBへデータ保存します。データを保存したUSBを直接3Dプリンタに差し込んで出力します。

 

5. こちらは上着ですが、このように逆さまに出力されます。

 

6. こちらはゴミ袋のパーツ。出力したては樹脂でべとべとです。

 

7. アルコールで洗浄していきます。僕は主に楽天でIPA(イソプロピルアルコール)を一斗缶で買っています。

 

ANYCUBIC Cure&Wash Plusを使用して洗っています。

 

 

8. 5分ずつくらい一次洗浄、二次洗浄。

9. 洗い終わったらエアダスターでアルコールを吹き飛ばします。

10. 手でサポートを「みりりっ!」と外します。

サポート痕が見えるでしょうか?

 

 

キャストに置き換える

信越シリコーンのKE-1314-2という半透明のシリコンを使います。

1. プラバンにパーツを真鍮線で立て、同じくプラバンを組み合わせて箱を作ったら、シリコンを流します。このあたりの流れも拙著『大畠雅人作品集 ZBrush+造形テクニック』で詳しく説明しています。

2. 固まったらシリコンオープナーとカッターを使ってシリコンを割ります。

3. シリコンから原型を抜き取ったら湯口を切ってOPPテープで上面を残して巻く。上面にレジンの溜まるプールを作ったら、真空脱泡機にかけて注型します。

4. ゴミ袋部分は透明キャストで注型。

5. 湯口やシリコンの裂け目の段ずれ(パーティングライン)は紙ヤスリで整えます。

6. こんな感じでレジンキャストに置き換えました。

彩色準備

色を塗る前にキャストについた油分を落とします。

1.  DAISOで買った洗顔用ブラシを使っています。

2. ジフと台所用中性洗剤で洗います。

3. 細かい部分は歯ブラシで。

 

色塗り

はじめにお伝えしておきますと、彩色もいつも決まった工程があるわけではなくその場その場の思い付きで塗っています。なので時系列でうまく説明することが難しいです。流れを見て「あぁ迷走してるな」と笑っていただければ幸いです。

ゴミ袋の中のぬいぐるみ

1.  まずゴミ袋に詰まったぬいぐるみから塗ります。これはキャストに置き換えず、出力物に塗っています。

2. アクリル絵の具筆塗り。ベース色にビビッドな赤を選びました。

3. ひたすらアクリル絵の具筆塗りで色を重ねていきます。

4. 透明のパーツをかぶせて雰囲気を見ます。人物部分は仮出力で出したもの。

5. 写真に撮ったらiPadで色味を考えます。

 

6. キャストにはすべて下地としてマルチプライマーを吹き付けます。まずアクリルで目線を決めます。

7. マスキングゾルを使って目をマスクします。

8. Mr.カラーの鑑底色とガイアカラーのノーツフレッシュオレンジを混ぜて肌色を作ります(ほぼ茶色)。

9.  エア圧を弱くして無地のキャストに直接吹いていきます。うっすら遠吹きを重ねるとこのように肌色ぽくなります。

10. 化粧品を筆塗りしてみます(実験みたいなもんです)。

11. うまいこといかなくて、色も濃い気がして、アクリルガッシュをスポンジでトントンして明るくしました。

12. また懲りずに化粧品。

13. 肌部分をマスクして髪を塗りました。

14. ガイアカラーのノーツフレッシュピンクをふわっと吹きました。

15. マスキングゾルをはがして、エナメルで目を描いていきます。

16. 一通り目を描いたら、またノーツフレッシュピンクをふわっと吹いて、さらにクリアを吹いてコートします。

17. クリアコート、エナメルで目を描くを何層か重ねるうちに肌の色が気に食わなくなって、アクリルをバシャバシャに溶いてうっすら塗りました。

18. 粒子を乾いた筆で伸ばしたらなんか良い感じの透明感が出ました。

19. 髪の毛もアイシャドウなどで光沢を出してみたり……すべては行き当たりばったりです。

20. ピアスなどメッキ部分はガンダムマーカーEX ガンダムメッキシルバーを筆塗り。

21. 髪や目や眉などの仕上げはアクリルガッシュで筆塗りで仕上げ、目と口はエナメルクリアで光沢を。

22. 髪の色が気に入らなくて、アクリルで塗り直し。逆に塗りすぎて、塗膜が厚くなりすぎたので顔部分をマスクをし、髪の毛の塗装をすべて剥がしました。ラッカーエアブラシ吹きで髪の毛を塗り直しました。

 

23. 下地の一色をラッカーで吹きます。服全てグレー(サーフェイサー)を吹いてから下地色を塗りました。シャツは彩度のある色を置きたかったのですが、これといったデザインを置くのも嫌だったので描いては消してます。

24. 陰になる部分は紫を吹いています。

25. 黄色にしようと思っていたパンツは途中からピンクに。黄色を下地として生かしたいので薄く何層も重ねます。

26. 彩度をがっつり高めてから落とすように塗って調整。

27. 完成……しましたがずっと気になっていました。「ぬいぐるみに直接座っているほうが良いのではないか……」と。一度気になったら作らずにはいれられず、あれだけ大変だった台座を捨てて作り直しました。

28. 小さいぬいぐるみをたくさん作ってひたすら並べました。めちゃくちゃめんどくさかったですが、もう思い残すことはありません。完成です。

 

 

 

 

Profile

大畠雅人

1985年生まれ、千葉県出身。武蔵野美術大学油画科 版画コース卒業。2013年株式会社エムアイシー入社。 デジタル原型チームに所属し、数々の商業原型を手 掛ける。2015年のワンダーフェスティバルで初の オリジナル造形「contagion girl」を発表。翌年冬 のワンダーフェスティバルで発表したオリジナル2作目の「survival01:Killer」は豆魚雷AAC(アメージングアーティストコレクション)第7弾に選出される。ワンダーフェスティバル2018上海プレステージでは日本人招待作家に選出。2022年、NHK『おかあ さんといっしょ』人形劇「ファンターネ!」のキャラクターデザインを務める。現在はフリーランス原型師として活躍中。

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