【造形NEWS】解体予定のメタボリズム名建築『中銀カプセルタワービル』を3Dデータで保存し、後世へ継承する取り組み、「3Dデジタルアーカイブプロジェクト」がスタート!

日本を代表する建築家の黒川紀章氏による設計で、1972年に完成した『中銀カプセルタワービル』。
竣工から50年を経過した建物は、老朽化が進み、2022年4月12日から解体着工されることとなりました。
ニュース報道されたのを目にした人も多いことでしょう。

『中銀カプセルタワービル』とは、1960年代に日本の建築家・都市計画家のグループによって展開された建築運動「メタボリズム」の思想を体現する建物として世界的に知られています。

そうした歴史に名を残す名建築『中銀カプセルタワービル』が消滅する前に、その文化的価値を3次元データで保存し、後世へ継承することを目指すプロジェクト「3Dデジタルアーカイブプロジェクト」が始動しています!

 

解体着工前にレーザースキャナによる3Dスキャン、一眼レフカメラによるフォトグラメトリ、ドローンによる航空測量を実施。

 

「3Dデジタルアーカイブプロジェクト」概要

 

◆「3Dデジタルアーカイブプロジェクト」とは!?

 

3Dデジタルアーカイブプロジェクト」は、『中銀カプセルタワー』の記録に対し、ミリ単位で正確な距離を計測できるレーザースキャンのデータと、一眼レフカメラやドローンによって撮影した2万枚以上の写真データを組み合わせて建物全体をスキャンし、実空間の情報をまるごと3次元データ化して保存します。

このプロジェクトは、建築や都市のデジタル化を推進してきた「gluon(グルーオン)」が中心となっています。

gluon」は、建築・都市を軸に新たな価値を創出するために、新しいデジタル技術と建築・都市の融合を企画から実装まで行うプラットフォームです。
これまでにも建築の3Dデジタルアーカイブや、3Dデータを活用した施策づくりを行ってきました。

平面的な写真や図面だけでは記録しきれない複雑な形状や立体的な構造を記録することで、建築形状を正確に把握し、デジタルアーカイブとして後世へ残していきます。

 

 

◆3Dデータ化の保存は、どのように行われるのか

 

実測に基づいて建物全体をスキャンすることで、実空間の情報をまるごと3次元データ化。
記録の方法は、ミリ単位で正確な距離を計測できるレーザースキャンのデータと、一眼レフカメラやドローンによって撮影した20,000枚以上の写真データを組み合わせていきます。
平面的な写真や図面だけでは記録しきれない、複雑な形状や構造の立体的な記録ができます。

それに加え、住人が工夫して暮らす中で改変した軌跡や、経年変化した建物の姿をありのままに記録して建築形状を3Dデータとして残します。

 

 

◆デジタル技術でデータを残すということ

 

建物の記録においては、今まで写真や図面による2次元での記録が一般的でした。

しかし、建築は3次元の空間であり、写真や図面だけでは伝達しきれないこともあります。

これまでは、3次元のものを2次元で記録する他ありませんでしたが、コンピューターやインターネットの普及によって、記録するメディア形態の選択肢も広がってきたことから、3次元の空間をそのまま3Dデータとして保存するようになったのです。

スマートフォンやデバイスの発達により、今後も3Dデータの活用機会は広がっていくでしょう。

だからこそ、消えていゆくものものを、今ある最大限の技術で記録を残すことが大切なのです。

 

『中銀カプセルタワービル』(写真奥)の前で、ARの同ビル(写真手前)と撮影。
現地では、『中銀カプセルタワービル』が仮囲いに覆われ始めているが、3Dデータとして記録を残しておくことで、ARで在りし日の姿をスマートフォン越しにいつでも呼び起こすことができるようになる。

 

◆クラウドファンディングで支援受付中!

 

3次元計測の費用や、データの制作費を集めるためクラウドファンディングを実施しています。
目標金額達成後は、3次元点群データをオープンソースとしてウェブサイトで無償で公開し、学術研究や新たな創作活動へ繋がる機会を創出します。

そして、クラウドファンディングのリターンには、「中銀カプセルのNFT」もあります。
NFTをリターンにすることによって、支援を通して活動が盛り上がり、支援者が所有するリターンの価値が上がる可能性があります。
そうなれば、「3Dデジタルアーカイブプロジェクト」を深く知りたいと思う人々の、新しい応援の形につながります!

 

◉クラウドファンディングページ:
https://motion-gallery.net/projects/3dda-nakagin

◉クラウドファンディング終了日:89日(火)

 

 

 

◆「バーチャルな建築」がアクティビティの実現に

 

宮崎県都城市にあった、建築家の菊竹清訓氏設計の『旧都城市民会館』を解体する前に3Dデータで保存し、記録しました。
レーザースキャンによる計測と、一眼レフカメラやドローンによって撮影した10,000枚以上の写真を組み合わせ、建物の形状だけでなく質感や空気感も記録し、高精細な3Dデータとして保存。
取得したデータは、アーカイブとして残すだけでなく、XR時代における新たな3Dデータの活用を実践したり、スマートフォンをかざすことで、市民会館が手元に現れるAR(拡張現実)の公開も行なっています。

さらには、実際の建物を訪れたような体験ができるVR(仮想現実)も展開し、VRゴーグルをつければ、360度あらゆる視点で、旧市民会館内部を見てまわることが可能となっています。

そうして、「バーチャルな建築」に生まれ変わることで、バーチャルな空間を活用してさまざまなアクティビティを実現することができるのです。


『旧都城市民会館の3Dデジタルアーカイブプロジェクト』
測量データと写真の質感を組み合わせて3Dモデルを生成。市の文化振興拠点として親しまれてきた建物の記憶を、後世へ継承した。

 

 

◆「3Dデジタルアーカイブプロジェクト」が目指すこと

 

戦後に建てられた近代建築は、竣工から50年以上が経ち、老朽化などから維持が困難になってくる建物が増えてくると予想されています。
たとえ解体され消えてゆくとしても、現代のテクノロジーを使って、アーカイブとして建物の価値を保存できます。

それだけにとどまらず、建物を生きた存在として、今の時代ならではの生かし方、デジタル空間上で活用して楽しむ術を構築していくことができます!

 

 

「3Dデジタルアーカイブプロジェクト」メンバー

 

・主宰:gluon(https://gluon.tokyo

・企画・監修:豊田 啓介(東京大学生産技術研究所特任教授 / gluon / noiz)
       金田 充弘(東京藝術大学美術学部建築科教授 / gluon / Arup) 
・企画・ディレクション:瀬賀 未久(gluon)
・3次元レーザースキャン:船越 亮(クモノスコーポレーション)
              西鼻 恵之(クモノスコーポレーション)
                       中井 麻友(クモノスコーポレーション)
              堀越 脩仁(クモノスコーポレーション)
・フォトグラメトリー:藤原 龍(ホロラボ)
           長坂 匡幸(ホロラボ / フリーランス)
           松川 元希(ホロラボ)
・ドローン測量:大隣 昭作(福岡大学工学部社会デザイン工学科)
・3次元計測:秋田 亮平(gluon / 東京藝術大学美術学部建築科非常勤講師)
・機材協力:株式会社構造計画研究所
・3Dスキャンデータ一部提供:中銀カプセルタワービルA606プロジェクト
 (藤田康仁[東京工業大学環境・社会理工学院、日本建築学会関東支部建築歴史・意匠専門研究委員会有志])
・協力:中銀カプセルタワービルA606プロジェクト