闇堕ちの戦士『threezeroX大山竜 ウルトラマンベリアル』デザインアレンジと原型制作の現場 大山竜インタビュー

世界中の様々なアーティストとともに、リデザイン版の可動フィギュアをハイエンド商品として展開していくthreezeroXシリーズ。

今回発売されるthreezeroX大山竜 ウルトラマンベリアルは、かつての光の国の戦士が力への渇望により悪に身を堕としたというシリーズ初、ウルトラの星出身の悪のウルトラマン。このデザインアレンジと原型を制作した大山竜さんに、デザインと造形制作の舞台裏を、ロングロングインタビューしました!

 

INTERVIEW 大山竜

「ウルトラマンベリアル」の大山さんの解釈について。

ベリアルは、多分初めての「悪のウルトラマン」だと思うんですよ。だからベリアルが登場したとき、ウルトラマンの新しい時代がきたなというのを感じました。

『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』では「ウルトラマンの星」を舞台にいろんなウルトラマンが登場して、人間の言葉を喋るんですよね。それがコミック版のウルトラマン(『ザ・ウルトラマン』/内山まもる・著)を映像化したようなイメージを受けて。今までは人間視点でウルトラマンを見ていた部分があったと思うんですけど、ウルトラマン達から見たウルトラマンの世界描いているのが新しいなと。その上「悪のウルトラマン」が出てきたというのが、この映画がウルトラマンの世界が新しいところに進んでいくスタートだったのかなと思います。

「原型を作る前にイメージを掴むために描いたスケッチ。手の爪のイメージはこの時にほぼ定まっていました。等身バランスやデザインは、このスケッチではなくオリジナルのベリアルを見ながら造形とデザインを同時に進めました」

 

「悪ではあるがウルトラマン」をコンセプトに「人知を超えた神のような存在」という側面を保ちデザインアレンジされたということですが。

ウルトラマンというキャラクターは成田亨さんがデザインされていて、いろんなウルトラマンがいますが基本的なデザインコンセプトは共通する部分が多い。その部分がベリアルにもあります。
黒が基調のデザインで口が開いたり爪があったり禍々しさを強調しているにもかかわらず、ちゃんと「ウルトラマン」している。だからデザインアレンジするにあたり、悪の部分だけを強調してしまうとウルトラマンの要素が薄まってしまうので「悪ではあるけどウルトラマンなんだ」というのを念頭に、スローガンのように念じながら作りました。

 

 

ウルトラマンの基本的なデザインコンセプトで、絶対にここだけは変えないという部分は?

やはり人のシルエットを綺麗に残すということですね。ベリアルってどんどん進化して形が禍々しくなっていくのですが、僕が今回作らせていただいたのは一番最初の『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』​​と『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』​​のベリアル。そこからははみ出さないように、それ以降のベリアルとかぶらないようにデザインしました。

 

粘土原型の素材とサイズは?

素材はスカルピーとエポキシパテです。『threezeroX大山竜 バルタン星人』と素材や作り方はだいたい一緒です。サイズは30数cmなので、商品はほぼほぼ実物大ですね。

 


「制作中の原型。エポキシパテとスカルピーで制作した半面を、ステンレスの板に貼り付けています」

 

 

バルタン星人では粘土原型を半分作って3Dスキャンし、残り半分を3DCGで作られていました。

今回も全く同じ。半分作ってもう半分を3DCGで作ってもらうというやり方です。武器(ギガバトルナイザー)に関しては原作と全く同じようにthreezeroさんのほうで作ってもらいました。実物よりも気持ち大きめに、という要望は出しています。

 

 

 

マントの素材は大山さんが選ばれたのでしょうか?

マントに関しては、僕がデザイン画を描いてその通りにthreezeeroさんに3DCGで作ってもらったものを監修しています。
ここのデザインは生物感強めでアレンジしています。少しグロテスクな気もしますが、円谷プロ様に監修していただいて修正の指示があれば直そうかな、という感じでデザインしてOKをいただけたのでこのデザインで進めました。

布に関してはthreezeroさんのほうから「こういう仕様でいきたい」というのを提案していただいて、僕もそれが一番理想的だと思ったのでそれで進めました。

 


「マントのデザイン。原型の写真の上にデザイン画を描きました」

 

デザイン、原型、デコマス完成までの期間を教えてください。

デザインから原型完成までで3ヶ月くらいです。塗装は原作通りでということでおまかせしたんですが、カイザーベリアルの爪の根元が黒くて先端が赤くなっている塗装などは原作とはちょっと違っていて、僕が特に指定したわけではないんですが僕だったらこう塗るだろうなというのを想定して塗装してくださったのかなと。すごくこちらの意図を汲み取ってくれているんだなというのを感じました。

 


「ほぼ完成状態の画像。これをスキャンして3Dデータ化したものが原型になります」

 

 

円谷プロさんの監修はいかがでしたか?

彩色で少しご提案いただいた部分はありましたが、基本的にはこちらの意思を尊重していただけて特に修正等はありませんでした。

 

 

頭身は映画版のスーツアクターさん(ウルトラマンベリアルは岩上弘数さん​​、カイザーベリアルは末永博志さん​​)に合わせているのでしょうか?

そうですね、なるべく頭身は合わせていますね。これを作るにあたって何回も映画を見ています。

 

 

筋肉がすごく発達しています。赤い部分は柔らかく、黒い部分が硬いという設定にされたということですが?

柔らかい、硬い、くらいの質感のイメージはしましたが、赤いところを筋肉、黒いところを甲殻とか、そういう設定すらも考えないようにしました。後に登場するベリアルがどんどん生物的になっていくんですよ。だから一番最初のベリアルでそれをやってしまうと別のキャラクターになってしまうので……。

筋肉は人体に忠実かはわからないですが、腹筋等の雰囲気は原作のベリアルに合わせて作りました。

 

 

 

背中の造形について。

背中は肩甲骨の部分を別パーツにしたりしています。なので、横から見るとかなり分厚いと思います。
もともと逆三角形を意識したデザインで他のウルトラマンよりもマッシブなのが特徴のひとつだと思うので、そこを少し強めにはしています。

 

 

口の造形について。

顔は基本的にはほとんどデザインを変えていないんですよ、歯の先端をちょっと尖らせたというくらいで。他の部分はアレンジしているのに顔だけ全く変えていなかったらバランス的におかしいので、歯を少し尖らせて邪悪な感じを強めたという。もともとウルトラマンとしては十分邪悪な顔なので、「やりすぎないように」というのを一番念頭に置いたんですが、実際できあがったものを見るとやっぱりわりと禍々しいですね。

 

 

 

デザインアレンジについて。

個性を出そうというのは最近はあまりなくて。僕がそっくりに作っているつもりでも個性が出ているとよく言われるので、それ以上入れるとうるさくなるからそこはあまり考えないようにしています。
ベリアルのような人気キャラクターは、そっくりに作られた高品質のフィギュアがすでに数多く出ています。そっくりなのがいいというお客様は他の商品を買うだろうから、少し気が楽ではあります。でも普段こういう商品を買わない人も「こういうアレンジだったらいいかな」と手にとってくれればいいなという欲求もありますので、そのキャラクターとのバランスを見ながらアレンジしていますね。

 

 

大山さんが作る作品には毒がありますが、そのあたりがベリアルにはマッチしていたと感じますか?

そのへんは僕にはわからなくて。自分に毒があるなんて思っていないので(笑)。でもそう言われることがとても多いので、普通に作って毒があるということはこれ以上は入れちゃダメなんだろうなっていう……。

 

 

 

87ヶ所以上の可動ポイントには大山さんの意見も反映されているのでしょうか?

とにかく指が動くようにしたい、という希望は出しました。赤い爪のほう(カイザーベリアル)はそういう仕様になっているはずです。
可動フィギュアって、おもちゃ好きからしたらたくさん動いたほうがいい。手が大きくて一番特徴的なので、ここが動いたらテンション上がるだろうなと。実際のベリアルの指には動きそうな関節というのはないんですよね。そのあたりはアレンジフィギュアじゃないとなかなか難しいことかなと思います。


「肩の可動範囲がこれくらい動くと嬉しいな、という理想を撮影したもの。実際に商品がここまで動くかは不明です」

 

 

ディテールで一番こだわられたところは?

やはり指ですかね。大きなシルエットはカイザーベリアルのままですが、動くとなると関節が見えるじゃないですか。関節があって動く指って考えるとやっぱり骨っぽいのかなとか、でも生物的になりすぎないようにとか考えて、骨か金属かわかならいぐらいの感じを目指しました。
手は実際より少し大きいですね。大きめにというのもアレンジのひとつです。あとは現実的に大きめじゃないと関節が入れられないだろうなというのもあります。

 

 

 

大山さん的に「ベリアルといえばこの決めポーズ」というのはありますか?

口が開いてほしいということくらいですかねぇ。決めポーズが通常のウルトラマンとは違うので、禍々しいポーズだったらだいたい似合うかなと思います。初代ウルトラマンならスペシウム光線のポーズはさせたいとかがありますが、ベリアルは特にそういうのはなかったので……。

 

 

この商品を手にとった人に向けて。

ウルトラマンをアレンジすること自体がタブーなのかと思っていたので、こういう商品が出るということ自体が僕の中ではすごいことで貴重だと思います。ぜひ手にとってほしいですね。

 

 

今後このシリーズで円谷プロのキャラクターを作られるご予定は?

今後もやると思います……くらいなら言っても大丈夫ですかね!

 

 

PROFILE

大山 竜(おおやま・りゅう)

1977年1月22日生まれ。中学1年の時に映画『ゴジラvsビオランテ』に衝撃を受け、粘土造形を開始する。
雑誌ホビージャパンにて竹谷隆之氏の作品に出会い、自由かつ個性あふれる造形に魅了され原型師の世界に憧れを抱く。
その後「立体造形は趣味として続け、本業としては絵描きになりたい」と思うようになり、美術系高校に進むも周囲の同級生に絵が上手い人が沢山いる事を知り、絵の道を諦め、造形科のある美術系短大に進学するも中退。その後の21歳の時にガレージキット原型師としてデビューする。
怪獣やクリーチャー造形の世界で少しずつ名を知られるようになり、今年で原型師歴24年目となる。
趣味は爬虫類の飼育と粘土造形(アニメやゲームのキャラクターを作ることが多い)エアガンの収集と改造。
2016年に初作品集『大山竜作品集&造形テクニック』(玄光社)、2017年『超絶造形作品集』(玄光社)を刊行。
大阪芸術大学でフィギュアアーツコースの講師も務める。最近はゲームのクリーチャーデザインなどジャンルを問わず幅広く活動中。

Twitter:@oyamaryu3333333

【好きなウルトラシリーズのキャラクター】
メトロン星人

 

商品情報

『threezeroX大山竜 ウルトラマンベリアル』

  • 作品名:『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』、『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』
  • メーカー:threezero
  • デザインアレンジ・原型制作: 大山竜
  • サイズ:全高約34cm
  • 仕様:塗装済み可動フィギュア(87箇所以上可動)、目(2種類の顔パーツ両方)と胸のカラータイマーにLED発光機能を搭載・要AG10ボタン電池×2個(電池別売り)
    付属品:交換式の顔と顎のパーツ×2セット(通常のベリアル用の頭部と、カイザーベリアル用の頭部)、交換式の手首パーツ×3対(通常のベリアル用に固定ポーズの開き手×1対、通常のベリアル用に武器保持用の手×1対、カイザーベリアル用に指関節がフル可動する手×1対)、通常のベリアル用の武器「ギガバトルナイザ―」×1、カイザーベリアル用のマント×1
  • 素材: ABS、PVC、POM、布
  • 価格:39,600円 (税込)
  • 発売:2022年3月

©TSUBURAYA PRODUCTIONS