【原型師INTERVIEW】ツインテールの毛束一本一本にこだわった造形 プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク「初音ミク -RAGE プロジェクトセカイ 2020 Ver.-」原型制作インタビュー!

大人気スマホアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(通称:プロセカ)。2020年冬に開催された「RAGE プロジェクトセカイ 2020 Winter powered by AQUOS 」の公式ビジュアル「初音ミク RAGE プロジェクトセカイ 2020 Ver.」が1/7スケールフィギュアとなって登場!手がけたのは、(株)eStreamが展開するフィギュアブランド「SHIBUYA SCRAMBLE FIGURE」。今回は担当フィギュアディレクター・ミカケさん、原型制作・Design COCOさんに制作秘話を伺いました。

「RAGE プロジェクトセカイ 2020 Winter powered by AQUOS 」とは?

国内最大級のeスポーツイベント「RAGE」による、スマートフォン向けゲーム「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」の賞金付き大会。RAGE初となる音ゲータイトルの大会。

なんと!今回は公式ビジュアルイラストを担当されたイラストレーターの村上ゆいち先生よりフィギュアへのコメントもいただきました。

 

INTERVIEW 村上ゆいち先生

——初音ミクの表情・ポージング・髪の毛について、力を入れられたポイント、こだわったポイントを教えてください。

eスポーツ大会のキービジュアルでしたので、躍動感のあるイラストになるように心がけました。舞い上がるツインテールや、回り込むフリックエフェクト、スポーティーな衣装など、活発な印象になるように仕上げました。「RAGE プロジェクトセカイ」のキービジュアルのご相談をいただいたとき、もしかして立体化されるのでは……⁉︎という思惑もあり、髪の毛の広がりやエフェクトの回り込みなど、空間を意識した構図にしました。

——初音ミクの衣装デザインにつきまして、デザインの意図・こだわったポイントはどこですか?

『プロジェクトセカイ』に関連するミクでありながらどのセカイのミクでもない、強いて言うなら「RAGEのセカイ」のミクのようなイメージで衣装を考えました。プロセカ内には登場しないけれど、プロセカに関するミクなんだと伝わるように、ロゴを入れたりゲーム内の各セカイのテーマカラーを取り入れたりしています。

——その他、背景のエフェクトや初音ミクの持ち物等、力を入れられたポイント、こだわったポイントはありますか?

プロセカ感を大事にしたかったので、普段はプレイで必死すぎてゆっくり見る機会のないノーツのデザインも再現にこだわりました。グローブのデザインで「このミクは人差し指派です」と表現したり、小物にはプロセカをプレイしている人だからこそわかるモチーフを入れています。

——デコマスを見たご感想は?

圧巻のボリューム!!——この一言につきます。
確かに奥行は意識してイラストを描きましたが、ここまで360度ボリューム満点になるとは聞いてなくて感動しました 。これはもう原型師さんがすごいとしか言いようがありません。自分で描いておいてなんですが……クリアTシャツと首から垂れてるベルトが交差しているところとかどうやってフィギュアにしたんだろうと思いました。

——デコマスで特に再現度が高いと思われた部分について教えてください。

これはミクフィギュアの醍醐味だと思うのですが、ずばりツインテールです。SHIBUYA SCRAMBLE FIGUREさんといえばエフェクト表現が凄いブランドのイメージなのですが、そのエフェクト力がミクのツインテールに集約されている!と思いました。ツインテールの広がりを後ろから見た時はびっくりしました。

INTERVIEW フィギュアディレクターミカケ・Design COCO

——「初音ミク -RAGE プロジェクトセカイ 2020 Ver.-」をフィギュア化するに至った経緯を教えてください。

ミカケ:プロジェクトセカイというアプリがColorful Paletteからリリースされ、eスポーツ業界に音ゲーであるプロジェクトセカイも入っていきたいということで、Colorful PaletteとRAGEを運営しているCyberZで色々進められていました。そこで、メインビジュアルも立てるのでそれに合わせてフィギュアも企画できればというのがきっかけです。

——村上ゆいち先生による公式ビジュアルを見た時の最初のイメージを教えてください。

ミカケ:実はゆいち先生のイラストを作る段階から結構参加していて、全体的な世界観とか雰囲気とか我々の方でもチェックしながら進めていました。音ゲー×eスポーツでプロジェクトセカイのゲーム性を掛け合わせていき、eスポーツ感を出しつつゲームに出てくるノーツを取り入れたようなイラストで疾走感とかを出したいと依頼してゆいち先生に色々な案を出していただきました。結果的に僕が想像していたゲームの世界観と初音ミクとしてのキャラクター性とRAGEeスポーツ大会の雰囲気を掛け合わせた素晴らしいイラストを描いていただきました。

——元のイラストは一角度のみですが、イラストで見えていない部分はどのように再現されたのでしょうか?

ミカケ:特に今回はオリジナル衣装で一枚絵のみでは立体化するときに再現できないということが多々あるので、その部分を村上ゆいち先生に三面図を描いていただき再現しました。

——イラストを立体化するにあたり、再現が一番難しかった部分はありますか。

Design COCO:ツインテールの再現がやはり一番難しかったです。そのボリュームゆえに作業が大変だったという点もありますが、細長い毛束がいくつもあるのでそれぞれが似たような造形になりやすく、いかに変化をつけるか、という点で悩みました。

——髪の毛の造形について、立体化にあたりアレンジされた点はありますか?

Design COCO:大まかな配置を決める段階で、正面から見たときは非常にボリュームがあるけれど横から見ると平面的でやや物足りない、という問題が出ました。そこで、正面のシルエットを極力保ちつつ他の方向から見ても見栄えが良くなるよう、毛束の本数や配置を調整しました。

——やわらかな肌感を出すために身体の造形でこだわられた点はありますか?

Design COCO:ベルトやホットパンツといったタイトな部分が目立つ衣装ですので、締め付け感にこだわりました。ただキャラクター性を考えるとあくまで健康的な肉感を目指したいので、そのバランス調整に苦心しました。クリアー素材のシャツからうっすら見える、脇の造形にもこだわっています……!

——衣装の素材感やリアルなシワを表現されていますが、工夫された点はありますか?

Design COCO:衣装のシワについては、実物の写真を参考にするとともに、フィギュアとしての流れを意識した造形を心がけました。特に今回のジャケットのような素材ですと、ただ実物を真似するだけではクシャっとした、いまいち見栄えの良くない造形になってしまいます。そのため、「物理的にはあり得ないかもしれないけど、この部分はこういう形のシワを入れると動きが出て良いかな……」といったことなども考えながら制作しました。

——背景のエフェクトの構成について、力を入れられた点と苦労された点を教えてください。

Design COCO:イラストと違い、フィギュアのエフェクトはどこかに接触させてパーツを保持する必要がありますが、それでも浮遊感や立体感を感じられるように配置を工夫しました。また一部のエフェクトは髪の毛の支えも兼ねているため、強度を確保しつつ見栄えを良くするという点で苦労しました。

——立体化までのワークフローと、それぞれにかかったお時間を教えてください。

Design COCO:まず大まかなパーツの配置やボリューム感を見るためのラフなデータ制作(約1ヶ月)。その後、修正箇所を直しつつ細部のブラッシュアップを行い(約1ヶ月)、修正が無ければ3Dプリンタで仮出力を行い、調整を重ねていきます(約2ヶ月)。CG、仮出力の原型など各段階で監修を受け、造形の監修を通過してから本分割+本出力(約3週間)、出力物の磨き仕上げ+複製して材料を置き換え+彩色(約3ヶ月)して完成、という流れです。

——原型制作に使用されたPCのスペック、ソフトとよく使用されるブラシ、 仮出力・原型出力に使用された3Dプリンタを教えてください。

Design COCO:PCスペックに関しては、CPUはIntel Core i7-7700、メモリ32GBです。
使用ソフトはZBrushで、ブラシはMoveブラシ、SK_Clothブラシ、SK_Slashブラシをよく使用しています。
3DプリンタはFormlabs社のform3を使用しています。

——おすすめの飾り方などはありますか。

ミカケ:ノーツが下から出ているので、裏も下も液晶になっていているショーケースをお持ちであればそのケースに入れてノーツが流れているような映像を映したりですかね(笑)。そういう飾り方をするとフィギュアの世界観や雰囲気をすごく出せそうだなと思います。サイバーチックというか暗い部屋でいろんな色のライトが付いているようなイメージなので、髪の毛とかクリアパーツに反射して色が変わって見えたり、いい雰囲気が出せるんじゃないかなと思います。

——他のミクとはここが違うぞ!という推しポイントはありますか。

ミカケ:個人的に最近のミクのフィギュアはキレイ系の表情や雰囲気というイメージがありますが、渋スクフィギュアのミクのイメージは天真爛漫でゲームを楽しんでいる無邪気な感じを打ち出しています。ミク自体の差別化はできているのではないかと思います。

——しかも今回はミクがスマホを持っているんですね。

ミカケ:そうなんですよ。元々プロジェクトセカイがスマートフォンやタブレットでプレイするアプリなので、スマートフォンゲームっていうのを表現に入れさせてもらっています。

——Design COCOさんの造形でe-Streamさんとしてはこうしたい!みたいな戻しはありましたか?

ミカケ:塗装の具合は一度修正していて、元々はもう少し髪の色が透明感が強かったのをもう少し塗りを強くしてほしいなど、透明感のバランスや肌の色などについて弊社からも意見を出させていただきました。

——一番の見どころを教えてください。

ミカケ:ぱっと見でインパクトのある髪の毛の広がり感やねじれ感っていうのは造形上Design COCOさんもかなり難しいところだったのかなと思いつつ、見どころの一つだと思います。彩色原型を見てもらうとわかると思いますが、髪の毛とか全体的に透明度があって、Design COCOさんにもeスポーツ感、近未来感、サイバー感があるような装飾にこだわっていただき、塗装の細かいこだわり・ニュアンスなど今までの初音ミクフィギュアになかったような表現を意識して再現しました。ミクの世界観に合わせたフィギュアを実際に見ていただけると嬉しいです。

——購入を検討中のみなさまに一言お願いします。

ミカケ:弊社も近年円安の打撃を受けていて、元々ご提供したかった価格よりも今回大幅に値上がりしてしまい申し訳ない気持ちもあるんですが、ギリギリまで調整して今回この価格で提供させていただいております。今回のフィギュアもかなりクオリティやスケール感を含めとことんこだわって作っているので、いいなと思ってくださった方はぜひお手にとっていただけたら嬉しいです。

商品情報

商品名:プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク「初音ミク -RAGE プロジェクトセカイ 2020 Ver.-」
サイズ:1/7スケール PVC製塗装済み完成品
大きさ:高さ305mm×幅311mm×奥行239mm
予約期間:2022年7月24日15:00~2022年10月31日23:59
原型:Design COCO(Art Director:CHIGA)
彩色:Design COCO(Art Director:CHIGA)
ディレクター:ミカケ
製造:(株)アルファサテライト
販売元:(株)eStream

 

Profile

ミカケ

SHIBUYA SCRAMBLE FIGUREフィギュアディレクター。
2019年4月eStreamのグッズプランナーとして入社しSHIBUYA SCRAMBLE FIGUREの立ち上げに関わりフィギュア企画ディレクターを担当。当ブランドの出すフィギュア全般の企画コンセプト、クオリティチェックを行なっている。他、「VTuberチップス」などの商品プロデュース、新商品開発なども兼任。

SHIBUYA SCRAMBLE FIGURE

㈱eStreamが展開する「スケール感」と「躍動感」を意識した高品質高級フィギュアブランド。世界に誇れるIPで世界に誇れるプロダクト(フィギュア)を生み出すことを目指しています。ブランド名には渋谷から世界に文化を発信することに思いを込めています。通称「渋スクフィギュア」。

URL:https://shibuya-scramble-figure.com/

Design COCO

アニメキャラクター等のハイクオリティな等身大・スケールフィギュアの制作を手掛ける制作会社。宮城県仙台市に本社を置き、3D制作から彩色まで社内一貫生産しています。工学的手法を駆使して、常に新しい技術を追い求め、3Dプリンターの開発・販売も行っています。